
ジェンダー・ギャップ革命
第7章 愛慾という桎梏
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愛津がえれんを迎えに向かったすぐあと、若松泰子が訪ねてきた。旅行の土産を置いて引き返そうとした彼女を引きとめて、織葉はえれんを待つよう提案した。
織葉は、このところ仕事以上に頭を悩ませている件を、泰子に相談することにした。応接テーブルに二人分のお茶を置いて、彼女の向かいに腰かけて、差し障りのない世間話で前置きしたあと、英真達が業務と雑談を交互に集中しているのを再確認して、話題を変えた。
「若松さんは、ドラマって観る?」
「それなりに」
「気になって一気見した作品があって、若松さんならどう思うか、意見を聞きたいんだけど……」
若松に、織葉を不審がる様子はなかった。日頃から世間話くらいする仲だし、もとより親権はないにしろ、実の母親だと聞かされている。
日頃からドラマの一つや二つ観る織葉が、日頃から世間話くらいする母親にドラマのあらすじを語ったところで、英真達は聞き耳も立てなかった。ところがひと通り話し終える頃、若松は目に見えて暗い顔つきに変わっていた。
「今のは、本当にドラマの話?」
「動画サイトで見付けた再放送で、有名じゃないかも知れないけど、ドラマだよ」
「織葉、それが現実だって問題ない。私個人としては、その方が──…」
「そうなんですか?!」
突然、第三者の声が割り込んだ。
はっとして織葉がデスクの並んだ方を見ると、瞠目した英真と目が合った。
