
ジェンダー・ギャップ革命
第7章 愛慾という桎梏
「あっ……待ってお義母さ──…ァッああぁ……っ」
母親と呼ぶ人間に女の側面を晒す羞恥。執着を寄せる女への欲望。
感情のせめぎ合いに追い立てられるようにして、織葉はえれんの指を望む。
自分が自分でない存在に変わっていく。
えれんとの肉体関係に、唯一、嫌悪感があったとすれば、自身に生じた欲望だ。背伸びしたい年頃の少女は、一方で成熟を拒絶する性質も備えており、当時の織葉もそうだった。
快楽を快楽と認める恐怖に慄えながら、織葉は彼女の愛に優るものを知らない。
「私、上手いかもね。これでも初めてなのよ……抱く側は」
「じょう、だん……あぁッ……」
「真面目な話。私を愛してくれる女性なんて、いなかった。ね?織葉だけ……こんなに心を許してくれたのは……」
雨に打たれた子猫のような顔のえれんに、織葉は片腕を伸ばしてキスを求めた。
下腹部がとろけそうにこそばゆい。ひくひくと腰をたわませながら、彼女の唇にキスを押しつけて、自身のあられもないところから立つ水音をかき消す。
くちゅ、くちゅ……くちゅ。
「これって、私から頼まなくちゃいけない、……?」
「そうねぇ、可愛くおねだりして欲しい……な」
えれんは今にも気を遣りそうな目を細めて、利き手を猥褻に動かしていた。彼女の指が、昨日まで濡れる感覚も知らなかった割れ目の潤いをいっそう促す。肌を這う手が、乳房や腰、腹や脚を性感帯に変えていく。
自身に羞恥を忘れた暗示をかけて、織葉はえれんに膣内への進入を懇願した。
大越湊斗は、彼女から自由も誇りも奪うことしか出来ない。しかし織葉は、彼女の望むものを与えられる。
どんな言葉でえれんに純血を委ねたか、痛みはあったか。
そうした記憶はぼやけているのに、翌朝、織葉が彼女の寝台で目覚めた時のことは忘れられない。
彼女は泣き腫らしていた。ただ、大越に見せていた涙とは別物だった。
