
ジェンダー・ギャップ革命
第7章 愛慾という桎梏
いつになく濃密なキスだけで脳の痺れるような浮遊感を覚えた織葉に、えれんは愛おしさを表す言葉を注いだ。唾液を融かし合う以上の触れ合いを嫌というほど経験してきた彼女は、娘の身体をまさぐって、部屋着の上着の裾の中に手を差し入れて、耳や首筋を啄む。
あれは彼女の寝室だった。
愛情の通った試しはなかっただろう夫婦の寝具が並んだ部屋で、母娘はソファにとどまったまま、息を上らせていく。
女が淫らな行為に耽ればどうなるか、小説から知識は得ていた。それでなくても織葉はえれんとの日々の中で、ことあるごとにその片鱗を意識していた。
「美しい……可愛い……美しいわ、織葉は私の希望……私の希望であるよう愛してきたの……」
この場合の「愛してきた」に、母性的なものはなかった。
中毒性を含んだキスを貪る間に、自分を見下ろす姿勢で覆い被さるえれんの下で、織葉の正気は剥がされていく。
えれんの手が、乳房を揉む。太ももを撫でる。挑発的で淫らな言葉が、彼女の声で耳をくすぐる。
織葉は空恐ろしさを覚えた。
仮にも養母で、配偶者を持つ女に対する感覚ではない。…………
それだけ甘美な呼び水だった。部屋着をはだいて下着に指をかけながら、えれんは織葉にこの世のものならざる恍惚に引きずり出した。
