
ジェンダー・ギャップ革命
第6章 異性愛者差別
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えれんの人気は若年層を中心に極めて高いが、アナログな思想を固守する世代の市民達は、往国茂樹や長沼そうまを未だ根強く支持している。
そうした現状を、愛津はビラ配りに徹した一時間弱の間に再確認した。
えれんの理念をシンプルに記載した紙面には、四年前の彼女の写真が大々的に目立たせてある。こうした印刷物を準備する度、本人はもっと控えめな方針で思案するが、若松や伊藤の手引きもあって、実際、彼女らも自身の認知度を上げるための自己主張は惜しまない姿勢を見せつけられれば、今回も倣わざるを得なかった結果がこの仕上がりだ。
街で宣伝活動をしていると、千差万別の反応がある。声援や好感を向けられることもあれば、無視や恫喝も恒常的だ。とは言え、アップショットでほとんど無加工、これで非の打ちどころなく美しいえれんの写真の入った印刷物を受け取るなり近くのゴミ箱に投げ入れる通行人を見ていると、時たま被写体と目が合った錯覚がして胸が忙しなくなる愛津は、その豪胆さを少しでも分けて欲しくなる。
