
ジェンダー・ギャップ革命
第6章 異性愛者差別
「恋、されないんですか?もしかしてもう、こっそりされていたりして」
「今更かな。織葉にもそういう質問を受けたけれど、私と恋だの結婚だのして、相手の方のメリットになることもないじゃない?」
「神倉さんみたいに素敵な人なら、一緒にいられるだけでメリットですよ」
それは愛津の本心だった。
半日えれんと過ごしてみて、間違いなく愛津は充足していた。
織葉より先に彼女と私的な時間を過ごしていれば、或いは彼女との出逢いがあと数分早ければ、愛津は今、全く違った胸の内で、毎日を一喜一憂して過ごしていたかも知れない。
苺ベースの巨大パフェは、ほとんど向こう側が見えるまでに減っていた。甘い甘いとぼやきながら、愛津とえれんは宝探しに興じる子供の顔で、また、クリームまみれのスポンジケーキや冷凍フルーツを取り分ける。
最後は満腹という試練を共に乗り越えた。
その時、えれんが愛津に彼女の秘密を一つ明かした。
「私が今の生き方を決めたのは、親友のお陰。私には、会えないところへ行ってしまった彼女を悼んで、復讐しているところがある。彼女、度を越した結婚催促でノイローゼになって、命を絶ったの」
愛津の胸に、言い知れないものが迫った。
どんな思いで、えれんは打ち明けてくれたのだろう。どんな思いで、彼女は男や異性愛者らを見てきたのだろう。
