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ジェンダー・ギャップ革命

第6章 異性愛者差別



「親戚のお姉さんがそういう人で、交友が広くて色んな場所へ行けるのが、大人だと思い込んでいたんです。私、ませていたんだろうなぁ。でも今、結構近いんじゃないかと」

「なら今度、エステへ行きましょう。習い事は英真ちゃん達に相談すれば、完璧じゃない?」

「自分磨きに……習い事……少しくらい違った方が、面白みありません?」

「じゃあ、また温泉くらいは」

「楽しみにしています」


 ホイップクリームに溺れていたスポンジケーキを頬張って、愛津は夢でも見ている心地に陥っていた。

 どのくらいの人々が、十代の頃に思い描いていた夢を叶えているのだろう。

 世界で一番不幸者だと自分を呪って、世の中のせいだの人は人を助けないだの僻んでいた四年前が、愛津には自分のことながら信じられない。


 愛津には明確な夢がなかった。と同時に、いつまで経っても果敢でいられた。十代の度胸を二十代に持ち越せた結果、えれんという夢に出逢えた。


「私の夢が叶ったのは神倉さんのお陰ですけど、案外、考えなしに動いてしまえる人の方が、奇跡に遭遇出来るのかも知れません。神倉さんは、昔は何になりたかったんですか?」

「お嫁さん」

「え?!」

「皇子様みたいな女性の、ね」

「ああ、……」


 それならしっくりくる、と笑った愛津に、えれんも口許をゆるめた。

 今でそこ仕事に没頭している彼女も、学生時分は夢見がちだったらしい。いわゆるクラスの人気者と少女漫画を模倣したような恋愛がしたかったとまでいかなくても、少女だった頃のえれんは今ほどの積極性や経験もなかった分、想像力は柔軟性に富んでいた。

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