
ジェンダー・ギャップ革命
第6章 異性愛者差別
「脱がないで」
「まぁ、とっくに汗はかいてますけど……」
「その浴衣、プレゼントするから。他のものも」
「えぇ……」
「休日出勤の報酬よ。織葉は高校の同窓会だし、英真ちゃん達は女子会で、愛津ちゃんには本当に助けられたの」
鏡越しに微笑むえれんに、愛津は暗示にでもかかったように頷いた。
ただ、愛津には、着る物を贈られることを避けて通ってきたところがあった。
愛津が身を飾ることに勇気や関心を持てたのは、織葉のお陰だ。今も自宅のクローゼットでは、彼女が初めて愛津に選んでくれた洋服が、純真無垢な存在感を放っている。
自分で洋服を新調することはあっても、他の誰かとあの日を模倣したくなかった。
レストランフロアへ移動すると、そこでもあちこちの店舗が祭りらしい企画を打ち出していた。
愛津達は、ショーケースに百を超える種類のパフェの並んだ店を選んだ。二人が目をとめたのは巨大パフェで、特別仕様の金魚鉢に入ったそれは、三人以下で完食すれば食事券が得られるというゲーム付きだ。ポップな店内には他にも浴衣姿の客達が多く見られたが、目が合う度、店員達は、愛津達にどこの浴衣か訊きたがった。
