
ジェンダー・ギャップ革命
第6章 異性愛者差別
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駅前の夏祭りを半日手伝ったあと、愛津はえれんと、近くのショッピングモールへ場所を移した。
ヨーヨー釣りや輪投げや型抜き菓子は、真剣に遊ぶつもりで飛びついてくる大人の客が多くを占めて、それらの店番をしていた愛津は、思いのほか汗をかいた。そこから歩いてきたものだから、外の熱気をものともしないひんやりした館内は、愛津を極楽へ導いた。
「涼しいですぅ。販売スタッフしていた時でも、あんな炎天下で、あんなに殺到したお客さん達を見たことありません!」
「私は接客も初めてだったわ。楽しくて感動しちゃった」
「ですね、私も暑さ抜きなら楽しかったです。お客さん達の浴衣姿も、目の保養でした」
「ね。愛津ちゃんも可愛いし。勝手に美容院を予約した甲斐があったわ」
「本当に有り難うございます。浴衣、汚さないようどこかで脱ぎますね」
店々は、どこも処分品と秋の新作商品が混在している。吸われたり吐き出されたりを繰り返している客達の群れは、感心するほど上手い具合に、各自に合った洋服や服飾品の並んだ売り場に辿り着いている。
通路を仕切る鏡面を見ると、愛津達も、きらびやかで景気の良い絵に馴染んでいた。
普段は一つにまとめているか下ろすかしている茶髪をゆるく巻いたえれんは、顔近くにつまみ細工の大小の花を飾っていて、白にも見える淡いラベンダーカラーの浴衣を合わせている。水流とアガパンサスの花の模様が目を惹くそれは、ラメの入った白金色の帯とよく合っていて、変わり結びがこなれた印象を引き立てている。くすんだ青いネイルは、左右どちらも一本だけ月から石のこぼれたデザインが施されていて、愛津の爪もピンク基調で同じに仕上がっていた。
愛津の方は、淡いピンク色が多くを占める装いだ。
白い貝殻とパステルカラーのひなあられのプリントが全面にあって、帯は明るい空色だ。シフォンやレースが追加されて、ファッションに強い女子達の使うSNSから抜け出てきたようだ。ちなみに今朝の美容師曰く、ひなあられに見える水玉は、同じ菓子でもおいりの方がしっくりくるということだった。いつもより濃く化粧して、ポイントウィッグで黒とピンクの巻き髪になった愛津は、高い位置で二つに結ってヘッドドレスを被っていた。
