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ジェンダー・ギャップ革命

第6章 異性愛者差別


 食べ方ひとつとっても綺麗だ。

 もし英治が先人なら、彼こそ作法の始祖になっても頷けたくらい、嫌味のない気品がある。こういうところも妹に似ている、と最近すぐ英真を思い出すのも、ありあが彼に似てきたせいか。


「時代が変わっても、なくならないものはなくならないと思うんだ」


 スイーツ皿から顔を上げると、英治の困憊した顔があった。


「ありあちゃんの心配してくれている通り、全く嫌な思いをしないで仕事は出来ない。最近は、男のくせにでしゃばるな、男のくせに大仕事が出来ると思うな、こういう指摘をよく受ける。昔は、力仕事や夜勤は男の役目、男は一人で恋愛映画を観に行くな、男ならシャキッとしろ、こまかいことを言うな……そんな時代だったのに。妹の結婚式で泣くなんて、非常識だっただろう。それに俺は往国家の跡取りとして、結婚出来なければ半人前だと言って育てられてきた。積極的な男にとって、今は地獄だ。でも昔のステレオタイプが苦痛だった男にとっては、悪い時代じゃないかもなって」

「まぁ、問題起こして捕まらなければ、税金が高いくらいだしね」

「問題起こして捕まっても、拷問官はありあちゃんだろう?」

「それは燃えるなー」


 聞こえようによっては不謹慎なもしもの話に、ありあと英治は笑い合った。

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