クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第12章 薔薇の谷 編
皆は妙な緊張感が途切れてしまったとき、立ち上がって立ち去ろうとした男がゆっくり振り返る
そしてラーズと目が合う
「……お前……ローズ家の坊主か?」
「え? そうだけど? アンタ誰だ?
俺は随分ここを離れていたから」
「眼がガブリエラに似ている、そうだな顔立ちもよく見るとそっくりだな」
「母さんを知っているのか?アンタ誰だい」
「お前はあまり知らないかもしれないが俺はイバン、ガブリエラとは兄妹のように育ったんだ
彼女を埋葬したのも俺だよ、今ごろ墓参りにでも来たのか?」
するとそばに居たエアジェイが驚いて立ち上がった
「イバン・バゾフかッ!?待ち合わせていた相手だよ、ラーズ!」
「ええッ!? あんたがッ!? ボロボロの浮浪者みたいじゃないかッ!」
「……ふん、身なりが良くなくて悪かったな
どうせ連邦軍の勧誘かと思って来たらえらく若い奴らが居るから何者なのかと接近してみたんだ、ネクタイ姿のスカウトマンだったら無視して立ち去っていたさッ!
お前たちみたいな若造が引退した男になんのようだ?もう俺は人殺しの兵器は作らないんだ
悪いけど帰ってくれ!」
イバンはくるりと向きを変えて立ち去ろうと歩いていった
ボロボロのコートは端が引きずられ、ポケットも破れて穴が開いている
「ちょ、ちょっと待ってくれよ?母さんの墓に案内してくれよ?」
するとイバンはピタリと足を止めた
追いかけてきたラーズが彼の正面にまわりこむ
イバンはラーズを見下ろし彼の目をじっと見つめる
「くそ、イヤな目で俺を見るな!ガブリエラを思い出させるな! もうローズ家の跡は行ったのか? あそこにはもう何も無いぞ?
全部爆撃の跡吹き飛んだんだ
彼女は丘の上で眠っているよ
行ってみるといい」
そう言うとイバンはさえぎっていたラーズの肩を押して歩き去ってしまった
そこへローズがラーズの後を追いかけてきた
「あの人を追わなくていいの、ラーズ?」
「あぁ、先に〈薔薇の谷〉へ行こう……」
「〈薔薇の谷〉?」
「あぁ、俺が生まれた場所だよ、ここからすぐさ、ローズ家だけでなくこのあたり一帯は薔薇の栽培で生計を立てていたからな
〈カザンラク〉の近くは〈薔薇の谷〉と呼ばれていたんだ…」
ラーズはバルカン山脈を臨む丘のほうを見つめていた……
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