テキストサイズ

クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第9章 黒海海戦


「こんなときに言うのはなんだけど、奥に並んでいたカプセルの少女たちは眠ったままなんだ
 どうやっても解除できなくってね
 何か知っていることあるかい?」


「……いえ、たくさんのキアラが眠っている部屋は私も見ました…
 撃たれたもうひとりのキアラもあそこから出てきたみたいです

 そのキアラは、自分たちのことを“不完全なコピー”と言っていました……

 自分たちは兵士としての能力が不足したコピーなので、あの兵器の管理者となった、と」


「なんだよ、それ? ひでぇな!
 まるで、消耗品みたいな扱いじゃねぇか!」


「ええ、そうね……、ほんとに
 キアラ自身も“乾電池みたいなものだ”と言っていたわ」


ラーズはチラリとローズのほうを見やる

「私はそこまでヤサグレでないわ?
 環境じゃない?
 その子にはお父さまやラーズのような人がそばに居なかったようね」


ローズはあまり気にしている様子もない

スティーブは黙って聞いていたが、ポツリと声を漏らした

「……と言うことは、どこかに“完全体のコピー”も居る、というようにも聞こえるね?
 兵士としての完全体のクローンが……」


スティーブの深刻そうな顔つきを見てラーズは隣の少女にふざけてみせた

「お前はどっちなんだよ?」

「知らないわよ?」



食堂にヨハネスとホーンキストも現れた


「ここだったのか、医務室に居なかったから
 なんかあったのか?」

スティーブはヨハネスに近付き、ふたりは別のテーブルに座り込んだ


代わりにホーンキスト船長がクレアに話しかけてきた


「クレアさん、今後の進退なんだが…、キミさえ良ければこの“ゾーナタ”に乗り込んでくれても構わないんだが?
 メカニックもシステムも人手は足らんし」


「私は連邦軍のお尋ね者ですよ?かくまったりしたらあなたがたにご迷惑が…」


「まぁ、そうなりゃあ名前は変えてもらわにゃいかんな? この船に乗り込んだ客人は名前を付けられるジンクスでもあるようだ」


ホーンキストは笑いながらローズのほうを見やった

「ジェニファーが勝手に呼んでただけよ」


「だってモビルスーツの認識コードがラーズ・ローズの名前だったから…」


「それは俺のモビルスーツだ!
 オマエ、俺のジムⅢを壊しやがって!」


ラーズは隣の少女の頭をがしっと掴んだ


ストーリーメニュー

TOPTOPへ