
クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第9章 黒海海戦
水蒸気爆発の衝撃のあと、黒海の海の上の空にはキノコ雲が上がっていく
まるで原子力爆弾か、火山の噴火、はたまたトムの言う通りコロニー落としでも行われたかのような荒れた天候となってしまった
「将軍!?みんな!?下の方はだいじょうぶなのかッ!? アイツはッ!? あのバケモノは仕留めたのかッ!?誰か、応答してくれッ!?」
眼下には凄まじい爆発の影響で目視できない
次々と蒸発する水蒸気の爆風でトムは機体の姿勢制御すらままならない
なんとかガタつかせながら低空まで降りてきた
そこで見たものは、
無傷で海面スレスレに浮いている謎の大型兵器の姿だった!
「コイツ………、ホンモノのバケモノだ!?」
トム・アーロンは標的が直撃の直前に俊敏に避けたことを知らない
彼には直撃を受けてもまだ無傷のように思えたのだ
そのときトム機のコックピット内にノイズだらけの通信が混じってきた
「トム……、くらわせて……やるんだ!
早く! 今なら
バリアーのエネルギーを使い果たして…」
声は間違いなくジョー・ディビーズ将軍のものだったが、最後まで通信は安定せず、ガガガッとノイズだけの状態となった
近くにジョー将軍が居る!
それも、まだ生きている
だが、彼女の命令は“トドメを刺せ!”というものだ
トムは周囲の捜索を後回しにして、腰部にマウントされていた質量バズーカを取り出し、目の前に鎮座する標的にお見舞いした
ズズーーーン!
標的の外壁に爆発と煙が上がる
またバリアーの上か?と思っていたら
それは紛れもなく外壁を破壊していた
「バリアーが効いてない!?」
大型兵器は石油タンカーの直撃こそ免れたものの、その落下爆発の衝撃を打ち消すためバリアーの全エネルギーを消費しきってしまっていた
宇宙戦艦ぐらいある巨大な標的を外すわけもなく、トムは残弾をすべて食らわせ、さらに携帯するビームライフルに取り替え攻撃を続ける
次々と爆発していく大型兵器
トムには標的を鹵獲する気など無く、ただ目の前の山のような巨大な兵器を破壊することしか毛頭に無かった
炎を上げていく標的
だが、依然空中を浮遊しており落ちてはいかなかった
