
碧と朝陽
第22章 月野郁人
診察室は俺と夜久さん2人だけになる。
「ごめんね、プライベートな話だ。2人でしよう。」
夜久さんは淡々と続ける。
「Switchっていうのは、Domの側面とSubの側面。両方持つ人のことだよ。君はきっとそれだ。」
「は?」
どういうことだ。
「君の中にいるSubの側面。そこが満たされない限り、体の不調は消えないよ。」
俺の中にSubの側面がある………?
虐げられて、喜ぶ、そんな性癖があるっていうのか?
「ふざけんなっ!!んなわけないだろ!俺はSubじゃない!!」
「うん。君はSubじゃない。Switchだ。両方になれる。」
頭が混乱する。わけがわからない。
「うーん。しょうがない。試してみようか、セーフワードは『やめて』だ。いいね?」
「試してみるってなにを…」
すると、急に診察室の空気がピリつく。
「Kneel」
コマンド!?
「あ、なんで…」
気づいた時には、俺は椅子から崩れ落ち、床に跪いていた。
「よくできました。良い子だね。」
夜久さんが俺の頭を撫でた瞬間、体がぶわっと熱を持つ。
なんだこれ。
「はい、おしまい。急にごめんね。どうかな?体調ちょっとマシじゃない?」
「あ、確かに…」
あれだけ治らなかった頭痛が無い。肩も軽い。
嘘だろ…?
「君はSwitchだ。それを受け入れ、正しく欲求を満たせば不調は消えるよ。またおいで。お薬も少し出しておくからね。今日はおしまい。」
そういうと夜久さんは席を立つ。
「まって、なんで、わかったんだ?」
「うーん、秘密。次来た時に教えてあげるよ。じゃあね。」
夜久さんはニコリと笑って診察室を出て行ってしまった。
その後で看護師さんが出てきて、薬のもらい方などを説明されたが、俺はイマイチ話が頭に入ってきていなかった。
