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碧と朝陽

第3章 お試しプレイ

あまりの碧の勢いに俺は折れた。
本当に相性がいいのか、どうなのか、確かめてやらなくもない。そんな気持ちになった。

「はぁ、わかったよ。じゃあ今から軽いやつを試してみるのはどうだ?」
「それでいいよ。セーフワードを決めよう。」

セーフワード………。

「いいよ、軽いやつだけだろ?だったら…」

「ダメだ!!!!セーフワードはSubだけじゃなく、Domにとっても大切なことだ。決めてほしい。」

先ほどとは変わって真剣な顔になる碧に少し驚く。
渋々セーフワードを考える。

「……じゃあ“助けて”はどうかな」

「わかった、いいよ。」

空気が変わる。

「あ、碧?」
「ふふ、名前で呼んでくれるんだ」

そっちだって勝手に下の名前で呼んでるくせに!なんて思ったけど、言葉にはならなかった。

「嫌だったらセーフワードを言ってね。じゃあ朝陽、Look(こっちを見て)はできる?」

頷いて、碧の目を見る。
吸い込まれそうな優しい目。
改めてイケメンだな〜なんてぼーっと思う。

「上手だね、良い子」

ドッと心臓が跳ねる。身体が熱い。なんだこれ。
思わず目を逸らしてしまいそうになるけど、ちゃんと命令は聞かないと……

「碧、恥ずかしい……」

「恥ずかしいね、でもまだLookのまま。次は俺の手に手を乗せてみて?」

碧の言う通り目を見たまま、自分の右手を碧の左手に乗せる。
手のひらの温かさが伝わってきた。

すると碧は俺の手を優しく握ってくる。
少し驚いたが、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。

「よくできました。朝陽はいい子だね。」

恥ずかしいけどすごく心地よくて、気持ちよかった。こんな簡単なことで俺………
頭がぼーっとする。何も考えられない。ただただ心地よかった。

「はい!おしまい!朝陽大丈夫?」

どのくらい時間が経ったのだろう。
碧に手を離されて少し名残惜しさを感じる。

「あ、う、うん。大丈夫。」

思わず視線を逸らす。
少し冷静になると、身体が楽になっていることに気付いた。

「どう朝陽?嫌だった?」

碧が優しげな表情で聞いてくる。
昼間は汗ばむくらい暖かくなってきたが、4月はまだ日が落ちてくると寒い。今も涼しい風が吹いている。
それなのに身体がぽかぽかしているのはなぜだろう。
 
ほぼ初対面の緑川碧とのプレイが嫌じゃないのはなぜだろう。

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