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止まない雨はない

第7章 ドルフィンリング

「鳴海とマスターの会話って、本当に噛み合わないな…」
そんな二人をなんとなく、楽しげに佐屋は見つめる。

結局、タカシは鼻歌交じりで量販店を出て行き、佐屋と鳴海はそのままタカシの店、BARルーカスへと向かった。

「思うんだけど、今日、マスター、店開ける気ゼロだと思う」

店のドアの取っ手に手をかけた佐屋に、鳴海は待ったをかける。

「?」

「診療所にそのまま居ついてルカ先生を困らせるって…」

「……かもね?」


二人はそのまま開店させるのをあきらめ、家へと帰ることにする。

「ねぇ…鳴海?」


帰り道、佐屋はまたそっと鳴海の手を取る。

「……マスターとルカ先生、幸せなんだね…」

「……なーんか、もったいないけど、やっぱ、ルカ先生はマスターしかいないって」

少し、肌寒くなり始めた夜だった。幸せな二人を思うと、
佐屋と鳴海の二人も、まるで我が事のように満ち足りた気持ちになれた。

「…鳴海、ここでキスしていい」

「えっ?…何いって……」

言うがはやいか、佐屋は道の電柱の影に隠れて、冷たくなった鳴海の頬に手で触れながら、そっとキスをした。

「家まで待てねーのかよッ!せっかち!!」

真っ赤になりながら、鳴海は佐屋を照れ隠しで睨む。

「…今日はマスターにアテられっぱなしだったからね…。僕、今夜は歯止め効かないかも…」

「ば……バカやろう!」

笑いながら、佐屋はコツンと鳴海の額に自分のそれを当てて、嬉しそうに繋いだ手に力を込めるのだった。

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