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止まない雨はない

第7章 ドルフィンリング

店員と話をしているタカシは心なしかとても楽しそうだ。
指環を贈ろうとしている相手が、かなり特別な存在であることが想像できる。

「も~我慢ならねーって!佐屋!今度こそ止めるなよ?行ってとっちめてやるって!」

「…構わないよ、なんなら僕も加勢する」

二人はすぐにタカシの真後ろに回ると、両肩をそれぞれ叩いた。

「ん?あれー?お前たち、二人揃って何してンの?」

「何してンのー?じゃないって、マスター!ちゃらちゃら指環なんか買おうとして、一体誰にあげるつもりだってッ!」

「そうですよ、僕も幻滅だな…」

鳴海と佐屋の表情が引きつっていることにも気付くことなく、タカシはいつものとおりしれっとしている。

「え?聞きたい?聞きたいかー?うん、うん、そーだよな!!
でも、アレだ。ナイショにしろよ?もうこの辺りではバレまくってるから、
オレもなかなかプレゼント選びとかも出来ないわけ。わかってくれっかなー?」

「わっかんねーよッ!!なんだよ、ソレ?オレはマスター、見損なったよ!
大恋愛の末に付き合ってる人がいるってのに!!」

鳴海にひどく責められていることに、タカシはまるで堪えていない。

「大恋愛!!鳴海、お前もやっと人生の要っていうものが、理解出来るようになったのか?うん、うん。やっぱ、佐屋のおかげだな?佐屋、お前、いい仕事してるよ」

タカシはふざけているようには見えないが、そろそろ鳴海の苛立ちがピークを迎えそうだと悟った佐屋が、埒のあかない会話をやめさせることにした。

「マスター、ルカ先生って人がいるのに、一体誰に指環を買おうとしていたんですか?」

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