いつかの君に感謝を
第7章 夜
診察を終え、満足したのか私の頭をポンポンと撫でてきた。私はその手を払うように、逃げるように身体をそらした
この人特に気にすることなくいつも通りだった。他の先生なら診察を終えたらすぐに他の患者さんのところに行くのにこの人だけは違う。こうやって今も用が済んだならさっさと帰ればいいのに出ていく気配がない
「舞?先生と少しお話しよ」
お話?話すことなんて何も無い
診察終わったならはやく帰ればいいのに……、というかはやく帰って欲しい
私がずっと黙っていると先生は独り言のように話し始めた
「舞はあの後2日間も眠ってたんだよ?かなり体力使わせたな。よく頑張った。舞が頑張ってくれたからちゃんと腫れは良くなってるよ。今日は起きたばっかりだけど遅い時間だしゆっくり休んで。あとさ、ここ落ち着かないでしょ?先生的にはここにいて欲しいけど舞が嫌ならいつもの部屋準備できるからそっちに移動してもいいよ」
予想すらしていなかった言葉
私は運ばれてから多分1週間ぐらいずっとICUにいた。先生や看護師さんの話し声や足音、気配、機械の音、患者さんのたまに聞こえる泣き声、静かな場所を好む私が落ち着けるはずもなかったことはお見通しだったみたい
正直素直に部屋移動したいって言いたい。けどこの前の処置のこと根に持ってるし、今日の診察もこの人のほぼ無理やりだった。
私が素直にそう言ったら私はずっとこの人の手のひらで転がされているようですごく癪
そしてそれを見ぬいているのも癪すぎる
「ほら、舞はどうしたい?ちゃんと教えてくれないと分からないよ。沈黙はここに残留っていう意思って捉えるけど大丈夫?」
私のこと知ってるとか大口叩いてたなら言わなくてもわかるでしょ。本当にこういうところが大っ嫌い。
ここは医局もナースステーションも近すぎるからこうやって長居されるし暇さえあれば来る。正直も何も迷惑すぎる
あの部屋に行けば来る回数は比較的ここよりも減るはず
「………あの部屋に行く」
「いつもの部屋ね。おっけい準備しておくね。明日の午前中には移動出来ると思うから。無理はしないように。じゃあ大人しく休んでるんだよ。また様子見に来るから」
そう言って満足そうにどこかへ行った
本当にムカつく
もう二度と来なくていいのに
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