テキストサイズ

恋人は社長令嬢

第1章 素敵な出会いにはご用心

「ありがとうございます。」

マスターに渡された紙を見て、瞬は財布から、お札を出した。

「ごめんなさい。私もお金、出します。」

梨々香は、慌ててカバンから財布を出した。

「あ、いいよ。今日は俺のおごり。」

「でも、今日出会った人に……」

「いいのいいの。お兄さんに甘えなさい。」

梨々香は、今までの泣き顔がウソみたいに、明るい笑顔を見せた。

「ごちそうさまでした。」

その笑顔に、また瞬の心臓はうるさくなる。

「行こうか。」

「はい。」

瞬は店を出るまで、梨々香がいる後ろを、振り向けなかった。


自分でも、顔が赤くなっているのが、分かったからだ。

瞬は道路に向かうと、手を挙げて、タクシーを拾った。

「梨々香ちゃん、家どこ?ここから近い?」

「少し遠いかも……」

「俺、家まで一緒に行ってあげるよ。それだったら、家に帰れるでしょ?」

梨々香は ゴクンと息をのんだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ