テキストサイズ

恋人は社長令嬢

第1章 素敵な出会いにはご用心

「ピアノとか…ヴァイオリンだったら、食っていくぐらいはできるけど……オーボエなんて地味な楽器、食べていけないって言うのよ。」

「うん。」

「オーボエだって!オーケストラには、必要な楽器なんだから!!!」

「その気持ち、分かる。だから、ティッシュで顔、拭こうね。」

「ふぁひがと……」

もう梨々香の顔は、涙でぐちゃぐちゃだ。


「ところで、そろそろ家に帰らないとね。梨々香ちゃん。」

「ああ……もうそんな時間……」

「マスターお会計。」

「ねえ、赤間さん。」

「ん?」

「私……家に帰りたくないなあ………」

瞬の心臓は 急に音が大きくなる。


長いまつげの瞳が 自分を見つめている。

「梨々香ちゃん。そ、そういうセリフは、まだ数年早いと思うよ。」

「そう?」

そう言って、伏し目がちになるのを見ると、彼女が大学生だという事を忘れてしまう。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ