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恋人は社長令嬢

第1章 素敵な出会いにはご用心

「私、夢があるの…」

「どんな夢?」

「……オーボエ奏者。」

瞬の頭の中は、真っ白。
「オーボエって何?」

「リコーダーの、もっと大きいヤツ!」

「あ、あれね……」

そうは答えても、まだ形すら見えてこない。

「いいよ、無理しなくて。みんな分かんないし。」

梨々香は、また小さくため息をつくと、遠くの天井を見た。


「専門に教えてくれる大学が、日本には一つしかないの。」

「あ、だから。」

「だけど親は、そんなの勉強したって、食べていけないから、やめろっていうの。」

梨々香の目には、ジワッと涙が浮かんだ。


その時、瞬の携帯に、至からの連絡が入った。

『悪い、今から行く。』

「悪い、今は来るな。」

『は?』

そこで、瞬は携帯を切った。


その上、肝心の梨々香は泣き始めた。

「ひ、ひどいと思わない?」

「うんうん、ひどい。」

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