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恋人は社長令嬢

第1章 素敵な出会いにはご用心

「私……一人で帰れます。」

「遠慮する必要はないよ。」

「ううん。ホント大丈夫。赤間さんって優しいんですね。じゃあ、おやすみなさい。」

瞬は咄嗟に、梨々香の腕を掴んだ。

「赤間さん?」

「あ、ごめん。そうだ、俺の名刺渡しておくよ。」

瞬は、スーツの胸ポケットから、一枚の名刺を取り出した。

「また親とケンカして、愚痴りたくなったら……連絡して。話ぐらい聞けるから。」

「はい。」

「じゃあ……」

瞬は、梨々香の腕を離した。


「ありがとう、赤間さん。今日は楽しかった。」

「ははは。だったら、よかった。」

瞬は、しばらく梨々香の背中を見送った後、タクシーに乗って自宅に向かった。

あんなに夢に真っ直ぐで、両親に反対されて泣いていたくせに、最後の最後で。

『今日は楽しかった。』 って言うなんて。


「運転手さん。」

「はい。」

「すみません、止めてもらえますか?」

瞬はタクシーを降りると、梨々香が歩いて行った方向に走り出した。

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