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シャイニーストッキング

第2章 絡まるストッキング1

 68 本当の驚き

「な、なにっ、契約システムプログラムだってっ…」
 ここからは演技や芝居ではなく本当に驚いたのだ。

 彼女は、美冴は、そこまで出来るのかっ、そんなにハイレベルなスキルだったのかっ…
 私はそう、本当に、本気で驚いていたのだ。
 そして今回の新たな試みの最大の難関と思われていた問題が、こっちの保険会社のシステムエンジニアの持っている隠し玉のシステムプログラムと、美冴のプログラムと融合すればかなりの精度になるのではないのか…
 と、予測されるのである。

「ま、まさか…」
 美冴がそんな女だとは…
 そんな隠し玉を持っていたとは。

「そうなの…そのまさかなの…」
 ゆかりの興奮もそれらの内容を話したら、少し落ち着いてきたようだ。

「い、意外だなぁ…」
「はい…」
「正に、棚からぼた餅が…ってヤツか…」
「ええっ、それはあまりにも古いわよぉ…」
「あ、そうか、すまん」
 だが、それ位に本当に驚いていたのだ、もう芝居ではなかった、いや、芝居していた事自体を忘れていたのである。


「それで…」
 するとゆかりは急に一転して言葉に詰まる。

「な、なんだ、どうした…」

「いや、だから、正社員雇用制度の適用として、そして今回、特例措置として…」
 急遽、明日から『新規事業計画準備室』所属に採用するので…

「部長面談をお願いしたい…の」
 と、苦渋の声でそう言ってきたのだ。

 あっ、そうか、そういうことか…
 今まであれほど私に合わせたくなかったからか。
 だがこれは業務上仕方ないし、やむを得ない慣例だから、面談しない訳にはいかないからか。

「うーん…」
 私は少し考えた。

 あれほど嫌がっていたしなぁ…
 そしてなんとなく、そんなゆかりが可哀想に思えてきていたのだ。

 あれほど頑なに私と美冴を直接会わせないように、そう、まるで駄々っ子の様にしていたのに…
 それがこんなカタチとはいえ、面談させる事になってしまったのである。
 ゆかりの落胆の思いは電話とはいえ、手に取る様に伝わってくるのだ。
 それに、今さら、美冴と面談だなんて…
 面談どころか、既に、まるで恋人の様にお互いの全てを知っているのだ。
 それが今更面談だなんて、逆に、照れくさくなってしまい、そしてその不自然さが、勘の鋭いゆかりに感ずかれる恐れの方が大きいのである。





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