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シャイニーストッキング

第7章 絡まるストッキング6 和哉と美冴2

 132 心の慟哭

『ねぇ和哉…わたしと……ヤリたい?
 本当はヤリたいんでしょう?…』
 突然のその問い掛けに、僕は言葉を失ってしまっていた。

 確かにさっき水族館でトイレから戻ってきた美冴さんの顔は少し変化が感じられた、いや、今朝からの美冴さんは昨夜とは違った様子には感じていた。

 だがそれは、昨夜は本当の意味での五年振りの再会であり、僕は元より美冴さんも緊張はしていたであろうし、もちろん昨夜は少しだけ色々とあった上での今日であるから、感じが違うのは当たり前であろうとは思っていたのだ。

 そして、朝イチに
『今日は…ちゃんとするから…』
 と、意味不明的な言葉を云ってきたのであるが、いくら考えてもその言葉の意味が分からなかった。

 だが、まさか…
『今日は…ちゃんとするから…』
 が、そういう意味だったのか…
 美冴さんの顔を見ながらそう考えていた。

「ねえ、わたしとヤらないと……」
 本当は、和哉の想いは終わらせられないんでしょう?…
 そう囁く様に言い、僕の手をギュッと握ってくる。

 確かに水族館から出てクルマに乗る直前に
 ああ、これで東京に戻って終わりなのかぁ…
 と、思ってはいた。
 いや、美冴さんがさっき水族館でトイレに行き、テラスで待っている間に
 このドライブが終われば本当に終わりなのかも…
 僕のこの五年間が終わる…
 と想い、そしてこれでいい加減に未練を断ち切ろうと決心をしていた。

 そしてクルマのドアの閉まる音で気持ちを切り替えたつもりにはなっていたのだ…

「わたしさ…、昨夜さ…
 あれから少し色々と考えたのよ…」 …わたしが悪戯に和哉を刺激してしまったなぁ…って反省してさ…
 そして気がついたのよ…

「え、気がついた…」
「うん…あのね、本当はわたしが…」

 ドキドキドキドキ…

「本当はわたしが…
 和哉に抱かれたかった…
 いや、ヤリたかったんだ…って」
「えっ…」
「わたし…わたしは、和哉ともう一度ヤラないと…
 ううん、抱かれないと終われないの…」

 それは美冴さんの、心の慟哭であった…

「和哉…あなたと…
 もう一度だけヤリたいの…」
 美冴さんはそう言って、僕の手を強く握ってきたのである。

 もちろん、僕だってそうだ…

 美冴さんとヤリたい…

 ヤラないと終われない…

 もう一度…





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