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シャイニーストッキング

第7章 絡まるストッキング6 和哉と美冴2

 60 言葉の盾

「ねえ和哉、あなたは今夜こうして会って、どうしたかったの…」
 美冴さんは少し考えた後に、いきなり、こうストレートに訊いてきた。

「えっ、ど、どうしたかったのって…」
 僕は予想だにしなかった美冴さんからの質問に、思わず戸惑ってしまう。

 どうしたかったの…って…

「スッキリした…
 五年間のケジメ…
 とか、そう云ってきたけど、本当なのよね…
 まさか、今更…」
 美冴さんはキッとした淀みない目で僕の顔を見つめ、ハッキリとそう問い掛けてきたのである。

 僕は…

 どうしたかったのだろうか…

 そして、今更って…

「あ、は、はい…」
 慌てて頷いた、だが、今更って…

「まさか、今更、わたしと……なんて思ってないわよね」
 美冴さんは有無を云わさぬ強めの口調で、そうハッキリと言い切ってきた。

 今更…って、そういう意味の今更か…

「は、はい…」
 僕は力なく呟く。
 
 だが、微かに隠し持っていたオスの欲情的な想いを『今更…』という言葉で簡単に、そして強く完全否定されてしまったのである。

 僕と美冴さんは五年前、そして僅か二週間という限定的な短期間ではあったのだが、毎日セックスをヤりまくったという過去にがある大人なのであった。 

 そして男である僕が下心が無い等とは決して思ってはいないのであろう…
 だから、それを踏まえてのこの強めの言葉なのであると思われるのだ。

 そして美冴さんのこの強めの言葉が、僕の心の中に深く、グサッと有無をも云わさぬ強さで楔を打ち込んできた…

 それに対して僕は返事をし、頷くしかなかった。

 美冴さんの気持ちはよく分かるのだが、この言葉により僕の儚い微かな希望は完全に否定されてしまったのである。
 
 でも、仕方がないのだ…

 僕と美冴さんは確かに過去に関係を持った男と女には違いないのだ、そして僕達は本当に今更…なのである。

 だからこそのこの楔、くさびなのだ…

 そして『今更…』という言葉の盾なのだろうと思うのだ…






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