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シャイニーストッキング

第6章 絡まるストッキング5 和哉と健太

 112 折り返し発信

 確かにある意味僕は、ストーカー的と捉えられても仕方がないとは思う。

 だが、ついさっき、午前0時少し過ぎ辺りの時間に美冴さんからのワン切り着信があったのだ。
 しかも非通知ではなく番号通知である。

 これは
『バイト終わったら電話ちょうだい…』
 という、美冴さんからの無言のメッセージの意味を含められた着信といえると思う。
 つまりは
 ストーカー的とは思われてはいない…   
 と、いう意味も含まれていると想うのだ。

 じゃなければ番号通知の筈がない…

 とりあえずよかった…
 僕はひとまず安心をする。

「よしっ」
 折り返し発信の電話をする決意をした、腹は括ったのだ。

 この五年間の想いの全てをこの電話に込めるんだ…

 僕は、携帯電話を握り締め、着信返信のボタンに指を触れた。

 ついに…

 ついに、五年間の遙かなる高い頂き的な、岳を越える時が来たのである。

 ドキドキドキドキ…

 そして着信リダイヤルボタンを押す。

 プルルルル、プルルルル…

 一回、二回、三回、と、呼び出し音がする…

 ガチャ…

「はい…」

 美冴さんに間違いない。
 懐かしい五年振りの、ややハスキーな声が耳に響いてきたのである。

「あっ、か、和哉です…」
 僕は必死に声を絞り出した。

「…うん…、和哉…久しぶりね…」

「は、はい…」

 ドキドキドキドキ…

 美冴さんの声を聴いて、一気にあの五年前に記憶が、意識が翔んでいく。

 あの駅前の最後の夜を過ごし、初めて朝まで共に過ごしたあのホテルに…

『じゃ、また、後で…』
 またバイトの後で…
 と、いう意味で僕がそう言ってホテルのドアを出て、別れ際にキスをした、あの時に…

 記憶が、意識が、鮮明に蘇ってきていた。


(393ページから394ページを参照くださいませ)




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