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シャイニーストッキング

第16章 もつれるストッキング5  美冴

 82 最悪でひどい夜…(6)

「ふうぅぅ…」
 わたしは手渡された半分程残っていた缶ビールを、ゴクゴクと一気に飲み干した。

 すると、このスッキリとしたビール特有の苦味と冷たい炭酸の刺激により…
 ノドの渇きと、さっきまで心に黒々と渦巻いていた醜い心の昂ぶり…
 そして疼痛にも似た絶頂感の疼きの余韻と、心の中いっぱいに溜めていた醜い澱みの塊…

 それら全ての渇望が、スーッ、と洗い流され…
 まるで浄化されたみたいに、きれいに流れ落ちた様な感覚になったのである。

 そしてもうひとつ…
 わたしのオンナという欲望の昂ぶりの熱さえもが、このビールの冷たさにより下がったみたいであった。

「はぁぁ…」
 と、ため息を漏らしながら、空になった缶をサイドテーブルに戻し…
「…………」
 ジィッと、彼の目を見つめ… 
「ふうぅぅ…
 ホント、最悪で…ひどい夜だわ………」
 吐息を漏らし、三たび、そう呟いた。

 それは…
 さっきまでの昂ぶりが、馬鹿らしく感じられてきた故からの呟きのコトバ。

 そう…
 この欺瞞の衝動こそが、本当にバカバカしい想いであり、愚か過ぎる。

 だって、その衝動の想いは、さっきまで心いっぱいに占めていた…
『盗る、獲る』ではなく…
『裏切り』を意味するから。

 そう、ゆかりさんへの『裏切り』であり…
わたし自身の、この先の未来への『裏切り』
 それは健太のこと…
 そして、密かに心に灯していた道標さえも、消してしまう。
 だから…
 こんな一時の衝動で、この先全てを壊したくはない。

 このビールの冷たさが…
 一気に心を冷まし、醒ましてくれたのである。

 心がスーッと醒めていく…
 
「え……」
 さすがに彼も、そんな三たびのわたしの呟きの想いの意味を察したのだろう…
 そして、さっきまでとは打って変わった、このわたしの醒めた目の色にも気付いたのだ。
 
 そんな動揺の声を漏らしてきた…




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