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シャイニーストッキング

第6章 絡まるストッキング5 和哉と健太

 107 携帯電話番号

 もしかしたら美冴さんもこの現実に驚いてしまい、今夜をきっかけに二度と僕とは会わない様に避けてしまうかもしれない。

 それはかなりの確率で起こり得ると思う…

 そして再々会のシミュレーションも、深夜の時間帯で美冴さんが一人という設定でしか考えてはいなかった。
 だからこの現実は、正に僕にとっては想定外の事態なのである。

 どうしたらいいのか…

 少しパニックに近くなってきていた、そして何気なく手の上にある僅か20円のお釣りとレシートを見た。

 あっそうか…

 そうだ、これしかない…

 そう想い考えて、レシートの裏に自分の携帯電話番号を書き記したのだ。

 もうこれしか方法はないかも…
 そう自分の気持ちを奮い立たせ、そして康くん家族、つまりは美冴さんの座っている席へと戻る。

「これ、この前のお釣り…」

「あっ、えっ、えぇ…」
 美冴さんは戸惑いながらも、僕が差し出したその20円と、レシートをおずおずと動揺した感じで受け取る為に手を出してきたのだ。

 そしてその時僕は精一杯の想いを込めて美冴さんを見つめ、20円のお釣りとレシート携帯電話番号を書き記したレシートを手渡したのである。

「じゃ、ごゆっくりどうぞ…」
 そして美冴さんがレシートをチラと見たのを確認し、康くん家族にそう声を掛けて離れて行った。

 もうこれ以上、美冴さんの目を見る事が出来なかったのである…

 ドキドキドキドキドキドキ…


 二度目の再々会はあるとは思ってはいたのだが、まさか、こんなカタチであるとは思ってもいなかった。


 やはり美冴さんとの事は必然な事なのであるのだ…

 そしてあの五年前から今日までの、僕の中での止まってはいない、動き続けている時間の存在も必然であったのだ…
 
 携帯電話番号を書き記して美冴さんに渡したのだ、後は待つだけである。
 
 だが今度は
 必然であるが故に必ず電話が掛かってくる筈だ…
 という、なぜか確信めいた自信が、突如として湧いてきたのだ。

 大丈夫だ…

 必ず電話が掛かってくる筈だ…

 落ち着け…

 後は、満を持して待つのみなのである。


 必ず、美冴さんから電話が掛かってくる…

 僕はそう想いながら、スタッフヤードからチラりと見える美冴さんの後ろ姿を見つめ、そう思っていたのであった。




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