テキストサイズ

シャイニーストッキング

第6章 絡まるストッキング5 和哉と健太

 106 1350万人以上分の1

「あっ、お釣りが20円あるんです…」
 と、僕は咄嗟に、そんな恥ずかしさとかなりの動揺をしながらそう声を掛け、慌てて逃げるかの様にレジへと向かって行ったのである。

 ドキドキドキドキドキドキ…


 なんて事なんだ…

 この現実は何なんだ…

 美冴さんが…

 僕が五年間探し続けていた美冴さんが…

 僕が昔の自分自身を重ねてかわいがってきていた康くんの叔母さん…

 叔母さんって…

 まずはその事実、現実に、驚きと不惑な想いが、ザワザワと、ドキドキと、僕の心を激しく揺るがせ、騒めかせてきていたのだ。

 なんていう現実なんだ…

 東京都民の人口約1350万人以上分の1の確率が、約一ヶ月程前のこの康くんのバイト入店という現実で、既に、繋がっていたという事なのか…

 僕はこの現実の重さに潰されてしまうような錯覚を感じていたのである。

 なにか…

 何か、見えない、そう…

 そう、見えない蜘蛛の糸に…

 昔から…

 あの五年前の、あの時から今日、この時まで…

 見えない蜘蛛の糸に絡まれていて…

 ただ僕は、足掻き、藻掻いていたのか…

 胸の昂ぶり、騒めきが、この現実に更に激しく高鳴り、止まらないでいた。

 この突然の再会の出会いは…

 偶然ではなく…

 必然だったのか…

 僕はこの事実に、現実に、めまいを感じ、そして重さに押し潰されてしまうような錯覚を感じていたのである。

 どうしよう…

 どうする…

 あっ、とりあえずお釣りを…

 とりあえず不払い処理済みの伝票とレシートを清算処理し、20円のお釣りと新たなレシートを発行した。

 ドキドキドキドキドキドキ…

 それでどうする…

 この再会の意味は、いや、康くんの叔母さんという繋がりの、この現実の意味は何なんだ…

 落ち着け、落ち着け和哉っ…

 驚きと、不惑と、動揺が止まらない。


 そうだ僕はこの再々会の時の為に、色々と考えていた筈だろう…

 そう、一昨々日の突然の再会から、万が一の再々会に備えて色々と、どんなリアクションをしたらいいのかを考えてきていたのである。

 どうする…







ストーリーメニュー

TOPTOPへ