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シャイニーストッキング

第6章 絡まるストッキング5 和哉と健太

 102 不惑

 あっ…
 そこに和哉が立っていた…

「ウチの母親と、ばあちゃんと、叔母さんなんすよ」
 康ちゃんが軽い感じで彼に説明をする。

「あっ、こちら和哉さん、ここに入ってからずーっとお世話になってるんだ」
 そう母親に、和哉を紹介をした。

「あっ、康徳の母です、本当にいつもお世話になってるみたいでぇ…」
 と、姉が立ち上がり、深々と頭を下げながらそう挨拶をする。

「い、いや、こちらこそです…
 あ、僕は、お、奥山和哉です…」
 和哉は、わたしにとって懐かしいフルネームを名乗りながら頭を下げた。
 

「あっ…」
 和哉は頭を上げて、そしてスッとわたし達を見回し、わたしの姿を認識して絶句した。
 そしてわたしの顔を見て、一瞬にして固まったのだ。

 その和哉の目には

 なんで…
 
 と、いう驚きと不惑の光が宿っていたのである。

 なんでわたしと康徳が一緒なのか…
 そんな事を問いただしたい様な顔をしていた。
 
 それはそうであろう、その驚きと不惑な目と、疑問の表情等はもちろん良くわかる…

 まるで、狐につままれる…
 とは、正にこんな表情なんだな、と、この時のわたしはそう思っていたのである。
 そして、わたし達が見つめ合ったのもほんの一瞬なのだが、とても長く感じたのだ。

「あっ、そうか…」
 と、その時、そんなわたしと和哉の一瞬の氷結を融かした康ちゃんの感嘆の声がしたのである。

「あのぉ…和哉さんの言っていたきれいなお姉さん的な女性ってぇ
 この美冴叔母さんの事だったんすかぁ…」
 と、康ちゃんがそう和哉に言ったのである。

「あっ、ああ、う、うん…」
 と、和哉は肯定とも否定とも、どちらとも取れる様な曖昧な呟きをしたのだ。

「えっ、きれいなお姉さん的なってぇ…」
 姉が不思議そうな声で訊いてきた。

「あっ、なんか、この前の夜に、和哉さんが、お釣りを渡しそびれちゃったみたいでぇ……で、それが…
 綺麗なお姉さん的な…ってぇ…」
 康ちゃんが、この前の突然の再会の夜のお会計時の経緯を和哉から訊いたのだ…
 と、話しをしてきたのである。

「あっ、そ、そうなんです…」
 と、和哉が慌ててフォローをしてきたのだ。

「あっ、お釣り20円あるんです…」
 と、和哉はかなりの動揺の声を漏らしながら、レジへと向かって歩いて行った…





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