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シャイニーストッキング

第6章 絡まるストッキング5 和哉と健太

 96 罪悪感

 真実の煎れてくれたコーヒーを飲み、トーストを一枚食べながら…
 もしも美冴さんがファミレスに再来店するならば、この三日間がポイントなんじゃないのかと、なぜか根拠の無い自信と想いが湧いていた為に、この三日間に実家に帰省すると真実に嘘の会話をした。
 そしてこの嘘は真実に対しての初めてついた嘘でもあった。

 ごめん…

 この三日間だけは僕の好きなようにさせてくれ…

 僕はコーヒーを飲み、そして真実の顔を見ながらそう思っていたのだ。

 これで完全に諦めるから…

 僕はこのお盆休み中に美冴さんとの再会が果たせなかったならば、もう完全に美冴さんとの事は、例え不完全燃焼であっても諦めようと内心決めていた。
 それは昨夜、真実を抱き、そして彼女の真摯な愛情を実感して彼女の為にも、自分のこの先のターニングポイントの為にもそうすべきだと決めたのだ。

 そしてこれで高校二年生の夏から始まった青春の想いを切り替える…
 のだ、と、真剣に考えたのである。

 だから再会が果たせなかったならば、このこだわりの想いの代名詞でもある、このファミレスでのアルバイトも辞めようとも考えていたのだ。

「じゃあ、和哉が約三日間いないんじゃぁ、ママとお出かけでもしようかなぁ」
「え、ママと…」
「うん、ママにお出かけを誘われてるのよぉ」
「そうなんだ…」
「なんかぁ、熱海にパパの会社の保養ホテルがあってぇ、そこに行こうってさぁ…」
 帰省が、まるっきりの嘘であったから、そんな彼女の話しに胸が痛んでしまう。

 でも、母親と出かける用があるのなら、少しだけホッとするわ…

「真実、ごめん…」
 心の罪悪感が言葉に出てしまった。

「なんでぇ、謝るのよぉ、お盆の帰省なんだからぁ仕方ないじゃん」
「うん、まぁそうだけど…」
 と、急に真実が愛おしく感じられ、僕は思わず彼女を抱き締め、キスをする。

「あん…」

「ま、真実…」
 そして彼女を引き寄せながら、ベッドへと寝かせていく。

「ああん、か、かずやぁ、時間大丈夫なのぉ…」
 と、帰省の電車の心配をしてくれる。

「大丈夫だよ…何時でも帰れるし…」

 嘘なのであるからもちろん大丈夫なのだが、実際にも電車で約二時間弱で帰れるのだ。

 それよりも、今は、この愛おしい真実を抱きたい…

 愛したかったのである…





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