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シャイニーストッキング

第6章 絡まるストッキング5 和哉と健太

 84 漂うコーヒーの香り

 やはり、解決しないと…

 僕自身が解決し、消化しないとダメなのだ…

 この真実の為にも…

 それに何より、自分自身の為にも…

 僕は真実を抱き締めながらそう想っていたのだ。

 そして僕達は抱き合いながら眠りに落ちていく…


「……は、あぁ…」

 僕は漂うコーヒーの香りで目が覚めた。

「あ、和哉ぁ、起きたのぉ、おはよう」
 真実がそう声を掛けてきたのだ。

「あ、うん、おはよう…」
 時計を確認すると午前9時過ぎである。
 部屋中に真実が煎れたコーヒーの香りが漂っていた。

「とりあえず、ホットコーヒーを煎れたけどぉ…」
 そう彼女が訊いてきたのだ。

「あ、うん、いいよ…」
 僕は真夏でもホットコーヒーをよく飲むのである。
 この部屋中に漂ようようなコーヒーの香りが大好きなのである。

 特に、今から勉強をする、試験勉強をする、こんな時間の直前にコーヒーを煎れ、この香りを部屋中に漂わせる事で心が落ち着き、勉強に集中できるのだ。
 だから僕は一年を通してホットコーヒー派なのである。
 味、銘柄等に特別なこだわりがある訳ではないのだが、ただコーヒー豆をミルで挽く、この香りが大好きなのだ。
 だから、必然的に3個の手動式のミルが大、中、小と揃ってしまっていたのである。

「あ、食パンあったからトースト食べる?」
 続けて真実が訊いてきた。

「あ、うん…」
 見た目は派手であるが、意外に真実は家庭的であった。
 なんでも母親が再婚する16歳までは母子家庭で育ち、日常生活のほとんどを幼少時期から自分一人でやってきたという。
 そしてその16歳の時に母親が再婚したそうである、その再婚した義父は、某大手建設塗装関係の社長であるそうで、再婚からは180度といっていいほどに生活レベルが格段に上がったそうである。
 今働いている弁護士事務所も、その義父の紹介からだそうだ。
 
『でもぉ、ママはママだからぁ…』
 と、ある時真実はそう云っていた。

『それにぃ、自分の好きなように生きなさいってぇ、言ってくれてるからぁ…』
 とも云う。
 そんな背景があるから、この真実は見た目の派手さとは別に、しっかりとしているのである。
 そして僕には真実のそんな面が自分とは真逆で、だからこそ彼女に惹かれてしまっているのだ、と、思っていた。




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