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シャイニーストッキング

第4章 絡まるストッキング3 大原本部長と佐々木ゆかり部長

 114 男の艶気

 だから今、目の前でわたしを見つめている彼を、大原浩一を…

 わたし一人のモノにしたいのだ…
 

「…して…」
 わたしは彼を見つめ返して、そう囁いた…
 の、だが、強く吹いている海風で、よく聞こえないようであった。
 だからわたしは彼にカラダを預け、唇を寄せていく。

「キス…して…」
 今度はちゃんと聞こえたようである。
 そして彼は、ハッとした顔をしてわたしを抱き寄せ、唇を交わしてきたのだ。
 その甘い、優しい口吻に、心が震え、蕩けるようであった。

 抱き合いながら唇を交わすわたし達を海風が巡り、舞っていく…

 わたしは彼の、わたしに対して魅せてくる大人の雰囲気や、普段から感じる落ち着きの中に潜み、微妙に見え隠れしてくるその心の揺れに、なんとなく可愛さを感じていたのだ。
 それになによりも、彼の優しさが一番伝わってくる目尻にしわを寄せる笑顔と、その魅力に、そして、それにより感じてくる男の艶気に、わたしの心は魅了されているのである。

 もう既に、ファザコン的な亡き父親の影を追い求めている想いは、消え失せていたのであった。

 そして確かにわたしは、彼と知り合う以前には、ファザコン的な想いから思いを寄せて、付き合いをした男は数人いたことはある。
 だが、しかし、その男達は皆、亡き父親の影を越えられなかったのだ。

 だが唯一、彼、大原浩一は違ったのだ…

 彼のこの男の艶気の魅力が、わたしのファザコン的な想いを唯一、越えさせてくれた男なのである。

 わたしはこの彼の艶気に、心から魅せられているのである…
 そんな事を、彼に抱かれて、キスをしながら、想い返していたのだ。


 そして彼は、わたしを抱き、唇を吸いながら
「今すぐ抱きたい、したい…」
  と、囁いてきたのである。
 わたしの心はその囁きに震え、蕩けてしまう。

 わたしも抱かれたい…

 されたい…

 愛されたい…

 だが…

 だけど…

 神様はすぐに悪戯を仕掛けてくるようなのである。


 そんな抱き合いながら唇を交わし、愛を切望しているわたし達の周りを、台風の影響による強い海風が舞っていた…

 そして時折、抱き合っているわたし達二人のカラダの隙間を縫うように、強い海風が走り抜けていくのであった…





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