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シャイニーストッキング

第16章 もつれるストッキング5  美冴

 79 最悪でひどい夜…(3)

 それは…

 意識の覚醒と共に、心身全体を覆ってきた最悪な目覚め…
 そして、ひどい夜の続きの始まり。

「うぅぅ、ふぅぅ…」
 わたしはそんな想いを巡らせながら、彼の姿、存在を探すと…
 閉まり切っていない、リビングルームへのドアの隙間に気付いた。

 あぁそうか…
 きっと彼の事だから寝落ちしているわたしに気を利かせ、ビールでも飲みながら、タバコでも吸っているのだろう。

 わたしはそう思いながら上体を完全に起こす…
「あぁ…」
 すると、目眩の様な揺らぎの不快と、残滓のウネリが心を騒めかせてきた。

 あぁ、本当に最悪…
 せめて、この騒めきだけでもなくしたい…

 すると、ふと、微かな香り、いや、匂いが…
 タバコの紫煙の残臭が…
 記憶という鼻腔の奥をくすぐってきた。

 あ、そうだ、彼のタバコはゆうじと同じ…
 灰皿を覗くと、半分の吸い殻が残っている。

 そうだ、ゆうじだ…
 ゆうじの匂いに包まれたい…
 いや、少しでもゆうじを感じられれば、この最悪な不快の余韻が和らぐやもしれない。

 わたしは腕を伸ばし、半分の吸い殻を咥え、火を点け…
「ふぅぅ…」
 空ふかしをし…
 そっと、灰皿に置く。

 すると、ゆらゆらと、紫煙が立ち昇り、周りに漂いはじめ…
 タバコの匂い…
 ゆうじの匂いが…
 ゆっくりと、わたしを包み込んできた。

 あぁ…
 すると、不快な騒めきが…
 不惑な心の揺らぎが…
 ほんの少しだけ緩んできたように感じられてきた。

「あぁ、ふぅぅ…」
 だけど…
 この最悪な余韻の不快さは、まだまだ落ち着きはせず…
 わたしは、また、うつ伏せに、ベッドに横になる。

 鼻腔に、微かなゆうじの残り香という僅かな存在感を意識して…
 再び目を閉じる。

 ガチャ…

 すると、ドアの閉まる音が聞こえ…

「……………」

 彼、大原浩一の、近寄る気配を感じ…

 ゆっくりと目だけを開き…

 彼を見る…


 

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