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シャイニーストッキング

第15章 もつれるストッキング4    律子とゆかり

 108 嫉妬心と対抗心

「あ、う、うん、そ、そう、あれは…」
 そしてそんな彼のたどたどしさと、そのあまりにも情けない揺らぎ感に苛立ち、わたしのスイッチを押したのだ、いや、違う…
 それは対抗心。

 佐々木ゆかり室長に対する嫉妬心からの…
 彼女には負けたくはないという張り合う心。

 こんな想いも初めてだ…
 今、現在に至るまで、本当にこんな嫉妬心やましてや対抗心なんて感情を抱いたことなんてなかったから。

 いつでも、いつだって一番であったし、身近にはわたし以上の存在はいなかったから…
 それにそうなれる様に昔から、常に努力、勉強をし、自分を磨いてきたのだから。

 だから、とりあえずのわたしの周りの世界、世界観にはそんな存在感はいなかった…

 学生時代だって…
 一生懸命に勉強してきて、努力して、常に上位成績をキープしてきた。
 モデル時代だって…
 自分磨きに努力、そして自己研鑽に努め、美容、理容関係の雑誌系ではあったがそのジャンルでの第一人者の地位を得ていた。
 
 そう…
 自分の世界観では負けたことなんてなかった。

 そして今、現在も、自分で望んだ訳でもないが、いや、望んで得られる訳ではないこの自らの出自の血脈…
 これを自分自身で認め、飲み込み、消化、解釈をし、それなりに努めてもいる、いや、そんな運命的な血脈の流れにも溺れずに自分なりに上手に生きていると自覚し、自負している。

 そんな流れの中でのこの最愛な彼、大原浩一という男と出会い、そして、自分自身の魅惑により昨夜、確実に自分のモノ、オトコ、男にした筈だったのだが…

 この佐々木ゆかりというオンナの存在感は過去に無い程なのである…
 そして彼との間に流れていた約2年間という時間も強力なのだ。

 そしてもう一人のこの蒼井美冴というオンナの謎の存在感…
 なぜかわたしの心が彼女の存在感にも囁いてくるのである。

 そうこの目の前にいるこの二人の存在感はわたしの過去には無かった感情を生んでくる…
 それが嫉妬心と対抗心。

 この二つの感情が、わたしの心を騒つかせ、そして…
 押してくるのだ。

 そしてこの二人があまりにも美しくて魅惑的過ぎる…

 だから…
「あ、はい、新潟出張の件についてはわたしからご説明しますね」
 その二つの感情が、このわたしのスイッチを押したのである。



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