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シャイニーストッキング

第15章 もつれるストッキング4    律子とゆかり

 107 初めての感情…

 この佐々木ゆかりには負けたくはない…
 彼はもう、わたしのモノ、いや、わたしの男、オトコなのだから…
 そんな嫉妬心からの激しい昂ぶりの感情が高鳴り、沸き立ってきていた。

 こんな想いは初めてだわ…
 
 そう、わたしの過去を顧みても…
 つまりは学生時代からモデル時代、そして一時期本気で愛した昔の彼との恋愛時代を思い返しても、この嫉妬心という感情の記憶はない。

 いつも周りの男達や関わった人々から常に好かれ、愛され、大切にされてきて、この嫉妬心という他人を妬み、嫉むという感情の経験等は感じた事が無かったから…

 今日が初めて…
 そう、初めて感じた…
 ザワザワと心が激しく騒めき、苛立ちさえ感じてくる。

 この佐々木ゆかりという女、オンナには負けたくはない…

「あ、うん、そ、そうだな…」

 すると、そんな感情に昂ぶり、揺らぎ、逡巡していると、彼がその佐々木ゆかり室長の視線の意味を読み取ったのだろうか、その彼女の…
『さぁ、早く、次の用件、新潟出張の話しを…』
 という意味をも込めた視線に彼が反応をし、心を揺らがせたままのたどたどしさで口を開いてきた。

 その彼の心の揺らぎ…
 それはおそらく、わたしとこの彼女、佐々木ゆかりという約2年の付き合いのオンナとの心の天秤のせめぎ合いの動揺の揺らぎであろう。

 それか、もしくはわたしにとっての謎で、怪しく、そして妖しい、妖艶な美しさを感じさせてくるもう一人の存在である…
 蒼井美冴という女の存在も加わっての彼のオトコとしての覚悟の無さの揺らぎかもしれない。

 そもそもが、今日、この常務室で、わたしと彼女、佐々木室長が初めて対峙するのは分かっていたのだから…
 もう少し、強く覚悟を決めるべきなのだ。

 あまりにも簡単に、揺らぎ、動揺の様が強すぎる、そして弱々し過ぎる…

 ま、だけど、そこが…
 そんな優柔不断で弱々しい面も、わたしの心を魅き、惹き寄せ、また、力になってあげたいというある意味、母性的な想いを感じさせてくる一面だとも思えるのだが。

「あ、う、うん、そ、そう、あれは…」

 そしてそんな彼のたどたどしさが、わたしのスイッチを押した。


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