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シャイニーストッキング

第15章 もつれるストッキング4    律子とゆかり

 89 対峙の時(14)

 そしてあともうひとつ浮かんできたのである…

 それは、あの新潟出張前夜に彼のマンションに出張準備として二人で訪れ、その帰り際に寄った彼のプライベートエリアといえるあのカフェバー…

 確か…
『カフェバー波道』
 そこでの会話である。
    (P2023〜参照)

 わたしが『いいお店ですね…』と問うと…

『だろぅ、少し前にさ、本当にたまたまなんだが偶然にこの店に入ってさ…
 そしたら、また、たまたま偶然にこのカウンターにコールセンター部の部下が座っていてさぁ…』
 彼はこの店には佐々木ゆかりと来た訳ではないんだ、という意味で、蒼井美冴さんとの偶然の出会いの流れを簡単に説明をしてきて…

 この彼のプライベートエリアの存在はわたししか知らないんだ…
 という喜々とした記憶も浮かんできたのだ。

 そうか、あの蒼井美冴さんか…
 そんな存在感の記憶が浮かび、蘇ってきたのだ。

 え、でも…

 だが、その記憶と共にある違和感も感じたのだ。

 その違和感とは…
 彼のその蒼井美冴さんに対しての声音と、やや動揺気味な言葉である。

 それは、わたしには、まるでさっきの佐々木ゆかりに対しての、同じ様な動揺気味な声音と言葉遣いと感じられたのだ…
 つまりそれは、彼の想い、思いへの顕れといえ、そしてわたしの心の中にある疑惑を生まれさせてくるのだ。

 えっ、ま、まさか、この蒼井美冴さんとも関係がある、いや、あったのか?…
 
 あのカフェバーでの蒼井美冴さんという部下との偶然の遭遇とは、必然な遭遇なのか、いや、だったのか?…

 わたしの心は、さっきまでの佐々木ゆかりに対しての全てに於いての優位な高鳴り、昂ぶりとは一転し…
 そんな新たな彼への疑惑の思いに一気に騒つき始めてしまう。

 だって、そんな思い、想いを想起させる彼の動揺気味な声音であるから…

 彼は、ウソ、嘘がヘタだから…

 わたしはそんな急に一転した心の騒つきを感じながら…
「失礼します…」
 と、コーヒーの準備を整え、お盆に乗せて三人の彼女達の元へと運んでいく。

 それに一刻も早く、その疑惑の彼と、蒼井美冴さんの顔を…
 表情を…
 目の揺らぎを…
 確認したいから。

 そんなくだらない疑惑を払拭したいから…



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