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シャイニーストッキング

第15章 もつれるストッキング4    律子とゆかり

 84 対峙の時(9)

 その会場内でわたしは、彼女、佐々木ゆかりの美しさに…
 嫉妬心を感じてしまったのだ。

 いくら山崎のおじさま曰くの美人の仕事のできるオンナという言葉を聞いていても…
 どうせ、少しくらいの美人顔のオンナが仕事が出来るが故に余計にいい女に見える程度であろう。

 わたしだって社会人も経験済みだし、そもそもが元モデルという、華やかで美しい女性ばかりの世界に存在していた経験もあるから、たかが知れているだろうと…
 それに世間一般、つまりは社会人としてのサラリーマン世界の中では、いいオンナ、美人等々と噂されている女性達の何人かを過去に見てきた経験上、わたしの想像、予想を上回る女、オンナ、美人、美女社員を見た事がなかった。

 だからこそ、少し大袈裟な、噂が先走り、独り歩きしている程度であろうと軽く考えていたし…
 この今や、わたしの愛しい男が大切にしているオンナの姿を一目だけでも見たいだけという軽い気持ちでもあったのだ。

 だが…
 本当に、佐々木ゆかりの美しさには驚き…
 そして嫉妬をし…
 焦燥感さえも感じてしまったのである。
 
 聡明で…
 理知的で…
 凛とした美しさ、佇まい…
 そして自信に満ちた輝く目…

 本当に驚いてしまったのだ。

 過去のモデルの仲間にもいない、いや、モデル並み美しさ…
 そして、銀座のクラブでもほぼ見かけないレベルのいいオンナ。

 これじゃぁ、彼、大原浩一が大切にしている訳だ…
 
 そう、まだ、あの当時のわたしの存在感は、いや、彼からの存在感としては…
 銀座のクラブホステスから、まだほんの一歩近付けた程度の、まだ彼の心に殆ど食い込めていない存在感であったから、彼女を見かけた瞬間にその美しさに激しく嫉妬心を持ち、強い焦燥感を感じてしまったのであった。

 だからこそ、わたしのあのお盆休みの彼の帰省への追っかけに通じた訳ではあるのだが…
 あの時の心の衝撃は今だに忘れない。

 いや、忘れられなく、それがまた今に通ずる彼女への対抗心であり…
 そして、この今、彼女に対しての…
 勝った…
 という強い衝動の想いなのであり、彼女とのこの今の憂鬱であった対峙の時をこうしてわたし自身の自信と優位に思え…

「え…と、皆さんコーヒーでよろしいかしら?」
 そしてそんな勝ち誇った想いでそう問えたのだ。



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