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シャイニーストッキング

第15章 もつれるストッキング4    律子とゆかり

 81 対峙の時(6)

 この彼から感じる違和感と、この嘘、ウソ、動揺は何の意味?
 何に対して?

 もう答えはひとつであろう…

 それは…
 わたしに対しての彼、大原浩一常務の男としての後ろめたい想い、思い。

 そしてその後ろめたさとは…
 つまりはこの松下律子秘書さんとの関係を意味するのではないか。

 いや…
 それは間違いない。

 ただの常務と秘書だけの関係であるならば、例え彼女が更にもっと絶世の美女であったとしてもこんな嘘や動揺や後ろめたさを感じる訳もなく、それにこうまでわたしに違和感を抱かせるはずもない…
 なのにこの彼の様子を鑑みれば、いや、これは誰だって簡単に察し、分かってしまうような狼狽えぶりといえるのである。

「あ、おっ、あ、蒼井くんも…ごくろうさま」

「は、はい…」
 そして鋭い美冴さんであるから、当然、彼のその不自然な様子をすかさず察した様な返事を返し、チラと横目でわたしを見て…
 また、そんな彼の不自然さに動揺をかているわたしの様子と隠している不惑の揺らぎをこの一瞥で感じ取ったみたいでもあった。

 そう、おそらくはさすがの美冴さんにはこの一瞬の一瞥により、全てを悟られてしまったようである…

「失礼します…」
 そしてこんな三者三様の不惑な想いと揺らぎの僅かな一瞬といえる間に、松下秘書がコーヒーを運んできたのだ。

 だが、この不惑の揺らぎの動揺をしているのは、わたし、美冴さん、そして大原常務だけではなく…

 このコーヒーを運んできた松下秘書さんも同じ様に…

 緊張?…
 揺らぎ?…
 動揺?…
 を、しているのが伝わってきたのである。

 なぜならそれは…

 カチャ、カチャ、カチャ…
 と、運んできてわたし達の目の前に配膳してくるコーヒーカップとソーサーの微妙な揺れの鳴動の響きが…
 つまりは松下秘書の指先の微妙な震えが…
 彼女のそんな不惑な心理を露わに物語ってきたから。

 

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