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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

 137 天使の如く…

 だが逆に心の奥深くに、律子の存在感の強さ、いや、怖さもジワリと感じてきていたのである。

 だけど、そんな想いは…
「さぁ、浩一さん、早くぅ…」
 そんな律子の急に甘えた、そしていきなりの私の名前を呼んできた事に…
 スーっと、淡雪があっという間に溶けるかの様に消えていった。

 だってそんな律子は天使の如くの笑顔を浮かべてきていたから…

「あ、あぁ、うん」
 そんな律子の笑顔に一瞬にして魅せられてしまう。

「さぁ早くぅ、行きますよぉ」
 そして律子に手を引かれ、エレベーターで最上階のフロアへと降りた。

「このイタリアンレストランも美味しかったの」
 するとエレベーター前のイタリアンレストランの入り口を指差し言ってくる。

「あ、そうか、すまなかった…
 そう、そういえば…」
 私は素直に謝り…
 そういえば、なぜ青山くんと一緒にいたのか?を聞こうとしたのだが…

「さぁこっち、バーはお隣ですよ」
 と、まるで私のそんな問い掛けを遮るかの様に隣へと誘ってきた。

「う、うん…」

「さぁこっちへ」
 そしてバーに入る。

「いらっしゃいませ」
 私達は大きな窓側の、まるでカップルシートの様なソファに座る。

「きゃぁ素敵な眺め…」
 そのソファに並んで座るなり、目の前には新潟市内の夜景が煌めき輝いていた。

「うわぁ、綺麗ねぇ、東京の夜景とはまた趣きが違うわねぇ」
 律子はそう呟きながら、私の肩に頭を寄せてくる。

「じゃ、カンパイ」
 そして私はワイルドターキーのロックを…
 律子はギムレットでグラスを合わせた。

「あ、でも、それ、大丈夫なのか?」
 と、私は律子のギムレットに対してそう問うた…
 なぜなら、ギムレットはジンベースの比較的強いカクテルだから。

「うん、大丈夫…
 それにアナタ…浩一さんと一緒だし」
 するとそう甘えた声音で囁いてくる。

「あ、う、うん、そ、そうか」
 私は、そんな律子に不意に、自分の名前である『浩一さん』と呼ばれて一気に心が昂ぶってしまう…
 なぜならばその声音が私にとっては天使の甘い囁きに等しいから。

 そして私には眼下に広がる新潟市内の夜景よりも…
 隣に座る律子のワンピースから伸びている、美しい脚の、いや、美しい光沢の艶やかなストッキング脚の方が遥かに煌めいて見えてきていたから。


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