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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

 134 心の揺らぎ…

「アナタだけ、夜景を楽しむんできたってのもねぇ…」

「えっ…」

 やっぱり…

 怒っている……みたいだ。

 私はその律子の言葉にドキンっと狼狽え、心が激しく揺れ動いてしまう…

「あ、い、いや、そ、それは、た、楽しむ…な、なんて……」
 動揺が隠せない。

「あらぁ、そうかしらぁ…
 だってぇ、さっき、あの秘書さんと…『なんちゃらタワー』とかに行ってきたんでしょう?」

 全部バレている…
 きっと、いや、今夜の流れの全てをあの青山一也から訊いてわかっているんだ…

「あ、い、いや、それは…」
 必死にいい訳をしようとするのだが、何をどう話せばよいのかわからない…
 それにあまりにも動揺をしてしまっていていい訳の考えもまとまりようもなかった。

「え、ううん、わたしは決して責めている訳では無くてよ…
 ただ…わたしも高層階からのこの新潟市内の…
 ステキな夜景をアナタと見たいだけですのよ…」

 やっぱり…

 完全に怒っているみたいだ…

 ヘソを曲げているレベルでは無いようである…

 サーっと血の気が引いていく。

 そして、こんなに感情を私に見せてくる律子の姿を初めて見た…

 あの夜…

 そう、一夜を過ごしたベッドの上で、深夜に佐々木ゆかりから着信があり、無意識にその携帯電話に手を伸ばした瞬間、律子にギュッと腕を掴まれ、阻止された時があった…
 その時、見受けられた感情の揺らぎにも私は肝を冷やし、考えを改めた出来事があった。

 だが、しかし、今夜の、この今の律子の露わになった感情の揺らぎは…
 また違う意味で激しく強く感じてくる。

 それに私は決して、彼女、竹下雪恵くんと何もやましく、間違った行為はしていない…

「わたしは…
 今夜の夜景を楽しみにしていたのよ…」

 あっ…
 おそらく、今、私のこの動揺をしながらも律子を見つめているこの目に、そんな想いが写ったのだと思われた。

 だからこその今の言葉であろう…

「本当は、ここのイタリアンレストランでのお食事だって…」

 あっ、そうか…

 そうだ…

 今の律子の感情は…

 怒りでは無いのだろう…

 そう…

 この律子の心の想いの感情は…

 嫉妬心なんだ…
 

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