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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

 128 自虐の後悔

 ジャーーーー

 私はシャワーを浴びながら…
 
 永岡支社長と別れてからの竹下くんと一緒にいた、いや、とりあえず結果的には何事も無くホテルへと戻ってきたのではあるのだが…
 その一緒にいたという事実に対して律子が怒っているに違いないと、カラダを洗いながらそう考えていた。

 それは…
『安っぽい香水のニオイがキツいから…』
 という言葉に全て込められていると思われ…
 それがずうっと脳裏をグルグルと巡っていたのである。

 確かに、いや、今となっては…
 なぜあんな、あからさまで見え見えな誘惑にあれほど心を揺らがせ、揺らぎ、迷走してしまったのか?
 と、ホテルに戻り律子のあの凛とした美しい姿を見た瞬間に、その思い、想いを一瞬にして後悔してしまった。

 いや、一瞬でも彼女の誘惑に揺らいでしまった自分の愚かさに…
 このオス的な未熟な自分の心の弱さに呆れてもいたのだ。

 だってやはり律子と竹下くんでは…
 私的には比べ、いや、比べる価値もないほどな開きがあるのを再認識したから。

 本当につくづく、自分のこのオスの心の想いの弱さに辟易してしまっていた…
 そして改めて竹下くんの誘惑に負けなくて良かったと心から思っていた。

 もしも万が一あの誘惑に負けていたならば…
 私という存在価値があっという間に崩れ、いや、消滅してしまっていた筈であるから。

 本来ならば、あの瞬間、つまりは竹下くんが見え見えの誘惑を仕掛けてきた瞬間から、毅然とした態度を取り…
 そしてハッキリと断り、拒否の姿勢をあからさまにしなくてはいけなかった筈なのだ。

 だがあろうことか、私は間抜けな事にさんざんと彼女の誘惑と、肉惑的な魅力に魅了され、振り回され、揺らぎ、揺れ…
 一つ間違えば陥落寸前まで迷走してしまった。

 そもそもが迷ってはいけないのだ…

 そしてそんな想いの全てを律子に見透かされ、挙句には…
『安っぽい香水のニオイがキツいから…』
 というキツイ諫言を云われてしまったのである。

 そんな想いがさっきからグルグルと巡り、また自分の愚かさと間抜けさの後悔で心がザワザワと騒めいてきてもいるのだ…
 そしてシャワーから出たら、果たしてどんな顔をして、どんな言葉を律子に話せば良いのだろうか?
 と、グラグラと揺れていた。

 ガチャ…

「ん?」
 


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