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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

 114 秘書 松下律子(24)

「いや、それは、男ですから分かりませんかもね…」

「あ、は、はい…」
 だがわたしだって、それくらいは想定はしている。


 だが彼に限っては、あの最愛の大原浩一常務に限ってはという思いが、いや、信じたいのだが…
 ただ世の中にはこんな男の、いや、オスの衝動の事を『魔が差す…』
 という一語でよく、いいや、簡単に済ませる事がよくあるから。

「それにおそらく今夜のおみやげは、ウチの支社の最高の刺客を…
 あ、いや、とても優秀で美味しそうなおみやげを用意している筈だと思うしぃ」
 と、彼、青山一也はまた少し卑下した笑みを浮かべながらそう言ってきたのた。

「え、最高の…美味しそうなって?」
 そうわたしが訊き返すと…

「はい、あ、松下さん、自分の言ってる意味分かってますよね?」
 そう言ってくる。

「ええ、それはもちろん…
 いちおうわたしも少しは色々経験を積んでますから分かりますけど…」
 そう、わたしは元銀座のオンナなのであるから、男の世界、サラリーマンの世界、弱肉強食のオトコ達の世界はある程度知っているし…
 理解もしている。

「まぁ、だから、そういう意味でのウチの最強ですよ」

「そ、そうなんですかぁ…」
 多分、おそらくは、こう呟いた時の表情が…
 今のわたしの心境と心情、そして立場や状況の全てを一瞬でも彼に対して表してしまったのだと思う。
 
「はい、大原常務も男ですからねぇ…」
 また、そうわたしの心を煽る様に、いや、わたしの事を一瞬にして理解した上で、敢えて、そう言ってきたのだと思われる。

「い、いや…」

 だが、この時のわたしの心の中には、さっきの『魔が差す』という言葉が思い浮かんでいきていた…
 そしてもう一語…
『彼に、大原常務に限って…』
 と、いう言葉も浮かんできていたのだ。

「いくらアナタが綺麗で魅力的でもね、男には落とし穴が、いや、隙間が沢山あるんですよ」

 あ、やっぱり、彼には完全にわたしの思いなんて見抜かれているんだわ…

「で、ても、そ、そう、どうして青山さんにそんな事が分かるんですか?」
 だが、わたしは必死の抗いをする。

 だってこれから東京に、本社に呼び戻して活躍してもらう優秀な人材、人物であるのだから、いや、それが今回の新潟出張の目的なのだから…



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