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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

98 秘書の基準

「さすがは東京の女性ですよねぇ…
 まるでモデルさんみたいに綺麗でぇ…」
 私にはそんな永岡支社長専属秘書である彼女が言ってきたその言葉の意味が理解できないでいた。

 いや、違う意味にしか理解できないのだ…

「やっぱりぃ、東京の本社の秘書さん達は皆お綺麗な美人さんばかりなんですかぁ?」

「え?」

「本当にあの松下さんなんかはまるでホンモノのモデルさんみたいでぇ…」

 そう続けて話してくる、そんな秘書の彼女はやはり…
 秘書という存在の、いや、存在そのものの基準と意義、意味を履き違えている様だ。

 だから…
「いや、彼女は確かに美人かもしれないけどもの凄く優秀で沢山の資格を持っていて本当に助かっているんだが…」
 と、ワザと律子の優秀さを強調した言葉を返した、いや、返したのだが…

「へぇそうなんですかぁ…」
 そう軽く流されてしまったのだ。

「でも東京にはもっともっと沢山の美人さんがいるだろうしなぁ」
 そして、こうも全く真逆な言葉をも返してきたのである。

「………」
 どうやらこの彼女にとっての秘書としての絶対的な条件と意義は…
 見た目の美しさなのであろう。

 私は返す言葉が無くなってしまった…

「確かに東京は何でも凄いからなぁ、私なんかも大学入学して初めて東京に出た時には余りの人の多さに唖然てしたもんだよ」
 そして永岡支社長も彼女のそんな言葉にに合わせたかの様な、私からしたら、まるでピントのズレた的外れなことを言ってきたのだ。

 それはどうやら永岡支社長的にも、秘書選択の絶対条件は見た目の美しさ、華やかさなのだと云っている様なモノであった…
 いや、この考え方はこの新潟支社全体での条件なのかもしれない。
 
 そもそもが、あの悪名高い前常務がほぼほぼ支配していたこの生命保険会社の本社自体が、まるで前時代的な男尊女卑の考え方の社風をまかり通してきていたくらいであったのだから…
 当然、こ前常務直系派閥の支社長の元であるこの新潟支社の女性に対しての見方、見識が、こうであるという事は当たり前なのであろう。

 だから女性社員の能力等は二の次、ある意味、見た目さえ良ければ問わないのかもしれない…

 それにそもそもが地方支社の秘書は、いや、業務内容を鑑みても支社長専属の秘書なんて…
 いらない筈なのだ。




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