テキストサイズ

シャイニーストッキング

第10章 絡まるストッキング9      美冴とゆかり

 175 ビアンな夜(77)

 わたしは…

 もう、我慢ができなかったのだ…

 映画を観て、買い物でもして、食事をして、そして、その後にゆかりのマンションを訪れて、また今夜も熱く愛し合う…
 内心、そんな前提の想いを秘めていた、お互いに。
 
 そのはずだったのだが、わたしのスイッチが入ってしまったのだ…
 とても、ゆかりのマンションに行くまでなんて、我慢できなかった。

 昨夜の余韻のせいもある…
 映画のせいもある…
 素敵な夜景のフレンチレストランのせいもある…
 バーでの程よい酔いのせいもある…

 全てが…
 今夜の流れの全てが…
 一気にわたしの心の我慢という壁を崩すしてしまったのだ。

 
 ゆかりの手を取り、エレベーターに乗る。

 部屋は階下の20階…

 エレベーターに乗ったら直ぐにでも抱き締めて唇が欲しかったのだが、残念な事に他のお客も乗り込んできた…
 だからわたし達はエレベーターの隅に立ち、再び手を握り合う。
 そして絡め合った瞬間に、その指の感触がまるで…
 心とカラダをも抱き合っているかの様な感覚と、熱を伝えてきた。
 
 20階に到着する。

 2022号室…
 フロアの1番奥の部屋。

 その部屋までのほんの僅かな距離が、もどかしい…

 ピー、ガチャ…

 そしてこのカードキーのロック解除の音が、わたしの心の平衡の鍵も開いた…

「あっ、んっ」

 わたしはドアを開き、ゆかりを抱くかの様に押し入れて…

 唇を求め…

 キスをしていく…


 それは、メスの衝動が…

 いや、ゆかりを愛したいという想いの衝動…

 同性愛関係での『タチ』という、いわゆる『男役』的な…

 メスではなくオス的な…

 そして攻めるというエス的な…

 そんな激しくも熱い衝動が、既にこの瞬間に、完全にわたしの思考を支配していたのである。

「は…ぁ…ゆ、ゆ…かり…」

「んん…み……さ…ん……」


 熱い夜が始まる…




ストーリーメニュー

TOPTOPへ