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シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 186 大原本部長との電話(26)

 そしてわたしは、いや、もう一人の冷静な自分が話していく。
 
 …あの二人で本社に行った日の夜から、わたしはこのお盆休みの9連休の何日間かを、共に過ごせる事を本当に心から楽しみに、愉しみに、していたの…

 でも、急な、いえ、松本副社長と山崎専務絡みのお仕事と云えるゴルフだから仕方ないし…

 急なお母さまのご病気だから仕方ない…

 けれども…

 わたしはアナタに会いたくて…

 逢いたくて…

 抱かれたくて…
 堪らなくなってしまっていた…の
 
 そして…

 さっき、とうとう我慢のダムが決壊してしまった…

 そう…
 
一人で勝手に在らぬ事を想像し…

 そして…

 そして…

 自分勝手に嫉妬してしまった…の

「でも、でもね…
 さっきのアナタの…
 浩一さんの…
 今すぐ来い、会いたい、逢いたい…
 そんな言葉に、声に、心が震えて…
 ふと、落ち着いたの…よ」
 と、わたしは激白したのだ。

 心の激白であり、慟哭に近い…

 そして本気、本音であった…

 いや、心からの叫びであった…のだ。

 偽らざる…

 わたしの彼への愛の本気の想いなのである…
 

  

 確かに、あの言葉は本気であった…

 本気で言った、心からの彼への愛の慟哭であり、偽らざる…
 本気の、私自身の想いであったのである。

『いや、じゃあ、私が今から戻る、戻ろう』
 すると彼は、浩一さんは今度はそう自ら言ってきたのだ。

 いや…

 わたしが言わせた様なモノであるか…

「えっ…」

『うん、今から東京に、いや、ゆかりの所に戻るよ』
 それを聞いて心が震える。

「あっ、ありがとうございます…
 で、でも、もう大丈夫ですから…」
 
 だが、これ以上、甘える訳にもいかない、いや、逆に…

 こんな思いも寄らない慟哭を激白してしまって、恥ずかしい想いが湧いてきていたのである…

 そして、本当にスッキリしてしまったのだ…
 そう、それは激しく昂ぶっていたのだが射精と共に急激に冷静になっていく男の心理に似ていると、云えた。

 つまり、激白した事によって、そしてそれにより彼の愛を再確認できて、わたしは満足、スッキリできたのである…

 そしてわたしは、すっかりいつもの感じに戻っていた。





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