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シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 185 大原本部長との電話(25)

 再び、心の中にそんな感情の想いが激流の如くに渦巻き、ウネリ始めたのであった。

 ああ、浩一さんに逢いたい…


『そうだよ、今すぐ来なよ、来いよ…』
 そしてそう言ってくれた、その彼の、浩一さんの言葉が脳裏にこだましてくる。

 わたしは心から浩一さんに逢いたい…
 その激情に心の中がいっぱいになってしまう。

「あぁ……」
 心からの慟哭の呟きである。

「………………」
 
 逢いたい…

 今、直ぐに、逢いに行っちゃおうか…

 行きたい…

 ああ、どうしよう…

 そしてわたしは心の中で急激に昂まってくる浩一さんに対して抱いている愛の恋慕に、胸がザワザワ、ドキドキと激しい騒めきを覚えていた。


 どうしよう…


「はぁぁ…、ふうぅ…」
 わたしはあまりの昂ぶりにより息苦しくなり、思わず吐息を漏らしてしまう。

 だが、この吐息が正に息抜き的な、そして昂ぶる心をフッと緩めてくれたようであったのだ…

 そう、それは、まるで、いっぱいいっぱいに、破裂寸前にまで膨らんだ風船から、小さくスーっと空気が抜けていくような感覚であった。

「はぁ、あぁ、ご、ごめんなさい…」
 そしてその瞬間に、もう一人の冷静なわたしが現れたのである。

 そして、そう謝った自分の声が、さっきまでとは打って変わって、至極冷静な声になった事に気付いたのだ…
 そう、わたしはなぜか、あっという間に冷静な、いつもの自分に戻れた…様な感じになった。

「あ、あの、ご、ごめんなさい…」
 そして、この、さっきまでの自分の、そう、動揺と戸惑いと不惑からの醜態に対して謝ったのだ。

『うん、どうした?』
 すると彼は、そんなそのわたしの瞬時の変わり身的な変化に少し違和感を感じた様な問い掛けをしてきた。

「浩一さんの…
 アナタの…、その言葉が…
 ううん、その言葉に心が救われました」

 救われた…と、いうよりも思いの丈を吐き出せたのでスッキリした、いや、できたのだと思われる。

『救われた…って?』
 だが彼は訳が分からない…
 そんな声をしてくる。

「ああ、本当にごめんなさい…」
 訳が分からない…
 それはそうであろう、あまりにも変わり身が早いから…
 そしてわたしは、いや、もう一人の冷静な自分が話していく




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