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シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 184 大原本部長との電話(24)

 これほど一人の男を愛した事がなかった。

 どうしよう…
 もう一人のわたしが必死に脳裏を駆け巡る。

 あ、そうだ、話題を変えよう…

 この重くなってしまった雰囲気を変えなくては…
 
「あ…の…浩一さんが居るその街って…
 あの、○○ゆうえんち、のある街ですよね…」
 
 実は、ついこの前に、浩一さんの実家って?…
 と、考えた時にふと思った事が不意にスッと、そう、言葉に出たのだ。

 そう、○○ゆうえんち…
 それは関東ローカルテレビ限定で比較的多くテレビコマーシャルが流れており、お祭りの音頭的な陽気で軽快な音楽に乗って印象的となり、知名度が高い遊園地であった。
 そしてその遊園地は、東京、神奈川、千葉県等の首都圏エリアと、群馬、栃木、茨城県等の小学生達の遠足で、一度は必ずといっていい程に行く遊園地なのである。

 だから当然、わたしも知っていたのだ…
 確か、小等部の低学年の時に遠足で行った記憶があった。


『ああそうだよ、○○ゆうえんちのある街だよ…』
 すると、浩一さんも話題が変わった事にホッとした感じでそう応えてきたのである。

「そうですよねぇ、本当に近いんですよね…」
 そう近いのだ。

『ああ、近いよ』
 在来線で1時間半以内…
 新幹線で約40分程度…
 確か遠足バスで二時間弱だったかな…
 で、行けてしまう近さなのである。

「ああ…、行っちゃおうかなぁ…
 浩一さんに…
 会いたい…逢いたい…です」
 そしてそう思った途端、わたしは、無意識にそう言ってしまったのだ。

 わたしはこの瞬間に、本気で浩一さんに会いたい…
 逢いたい…
 と、思ったのである。

『うん…
 そうだ、そうだよ…
 私もゆかりに逢いたいよ…
 来なよ、おいでよ…』
 すると浩一さんは、即答のタイミングでそう言ってくれたのだ。

 この瞬間、わたしの脳裏いっぱいに浩一さんの顔が、あの屈託の無いあの笑顔が浮かんできたのである。

『そうだよ、今すぐ来なよ、来いよ…』
 そしてダメ押し的に、更にそう言ってきたのだ。

 ああ、会いたい…

 逢いたい…

 今すぐ…

 抱かれたい…

 愛されたい…

 再び、心の中にそんな感情の想いが激流の如くに渦巻き、ウネリ始めたのであった。

 ああ、浩一さんに逢いたい…




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