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　183　大原本部長との電話（23）

　このわたしが…

　泣いている…

　彼に…

　浩一さんに逢いたくて…

　そして嫉妬に心を波立たせて…

　涙が溢れてきた…と、いうのだろうか。
　

『ゆ、ゆかり…』
　すると彼はもちろん、そんなわたしの涙声に、泣いているわたしに、気付いて思わず名前を呟いてきたのだ。

　そして、慌てて…

　わたしは必死に嗚咽を堪え、涙を堪え、とうにこの涙声で分かってしまってはいるのだが、なんとか心の激情のウネリを押さえようとしていく。

　泣いたのは…

　いや、泣いたのなんて…

　涙を溢したなんて…

　いつ以来だろうか？…
　と、もう一人の冷静なわたしが自問自答してくる。

　確か、ついこの前、美冴さんと友達になって欲しいと伝えた共に過ごした食事の夜の時に、美冴さんのこれまでの身の上話を訊いて感動と同情という、感情が押さえ切れずに涙をこぼす、いや、もらい泣きだったのだろうか…
　その時にもいつ以来なのだろうか？て、思ったのだが、それくらいに泣いたの記憶が無いのである。

　あの、元夫に色々やらかされ、裏切られた時は本当に悲しかったのだが、涙はこぼれなかった…

　それ以前に涙をこぼす…

　泣いた…

　そんな記憶は無い…

　正に『鉄の女』だったのだろう…

　それが今、彼、浩一さんとの電話での会話中に、一人勝手な妄想に嫉妬心を自ら駆り立ててしまい、動揺して、こうした激情の昂ぶりを押さえ切れずに涙をこぼす、いや、溢れさせてしまっている…

　本当にわたしは変わった、いや、変わったのである…

　そしてその彼への愛情の昂ぶりの感情のウネリを押さえ切れなく、コントロールできなくなっているのだ…

　おそらく黒歴史と云える、過去の登場人物との再会という衝撃の事実もあるせいだとは思われる…
そして、それが、この突然の浩一さんとの逢瀬が流れてしまったというショックと寂しさを更に仰ってきているのだという事も分かってはいるのだが…
　なんとかこの感情のウネリを押さえようとしてはいるのだが、いかんせん、今までにこんな経験を、いや、これほど一人の男を愛したという事実、経験をしたことが無いから余計に戸惑いも高まっていたのである。