テキストサイズ

シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 180 大原本部長との電話(20)

「そうなんだぁ、意外と帰らないモンなんですねぇ…」
 それは本当に意外であった。
 そして続ける。

「でしたら、昔のお友達なんかとは全く会ってないって事ですかぁ?」

 昔のお友達…
 不意にそう思い浮かんだのだ。

『あ、うん、そうなるかな…』

「だったらぁ、今夜とかぁ、明日とかぁ、会えるチャンスあるんじゃないんですかぁ?」
 ふと、そう思ったのである。
 
 そしてそれはおそらく、さっきの蓮からの電話の影響が少なからずあったと思うのだ…
 
 但し蓮は昔のお友達では決して無いのだが…
 
 そしてもう一つの想いも、ふと、浮かんだのである…
 
 それは…

 罪悪感…で、あった。


 別に彼に対しての裏切り的な想い等は全く無いのであるが…

 あまりにも他人に言えないようなわたしの昔の…そう、黒歴史と云えるほどの酷い、過去が…

 裏切りではなく、彼に対しての後ろめたさ…
 決して明かせない、絶対秘密な過去という想いからの罪悪感であるのだ。
 

「昔のお友達かぁ…
 なんかぁ、いいなぁ…」
 と、わたしはそんな自分の想いを打ち消す意味でも、そうしみじみと呟いた。

「ほらぁ、わたし、都内の生まれ育ちなんで、田舎とか無いんですよねぇ…
 両親も二人とも東京人だし…」

 そして、そう続けたのだが…
 それは半分本当であり、半分がウソである。

 なぜならば、わたしには今日にまでの過去に、友達という存在がいない…
 いや、つい先日までいなかったから。

 だが、さすがに、その友達関連の本当の話しは彼にも言えない…


『うん、そうだったな』
 わたしが生まれ育ちが東京なのは、昔、彼には話してあった。
 だからなのか、なんとなく、しみじみと云ってきたのだ。

「いいなぁ…
 昔の懐かしいお友達かぁ…」
 そしてわたしは、思わずそう呟いてしまう。

 本当に羨しかったのである…

「不謹慎ですけど…
 お母さまも大丈夫みたいだし、今夜とかぁ、明日とかはそんな懐かしいお友達とお過ごしになったらいいんじゃないですか…」

 思わずそんな言葉が飛び出した…

『あ、う、うん、そうだな…
 それもいいかもなぁ…』
 
「もうご法事の段取りは?…」

『ああ、弟が実家を継いでいるから、全部やってくれているんだ…』
 




ストーリーメニュー

TOPTOPへ