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シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 179 大原本部長との電話(19)

「お父様の10周忌のご法事は13日ですから…
 今日は11日ですし…」

 少し浮かんだ想いを口にした…


『うん…』
 すると彼は、なんだ?…
 って感じの返事をしてきた。

「今夜も、明日の12日もアレですねぇ、丸々暇になっちゃうのかぁ」
 さっきの新幹線の想いを聞いてしまったから、つい、そう嫌味的な感じで言ってしまった。

『えっ…』
 すると彼はわたしの呟きの意味が分かった感じで、ドキッとした声になったのだ。

「今夜も、明日の12日も、アレですねぇ… 
 そうかぁ、丸々暇になっちゃう訳なのかぁ…」
 そしてわたしは思わず突っ込む。
 
『えっ…』
 彼は完全に動揺してくる。

『あ、い、いや、暇って…』
 返す言葉が続かない…
 そして、動揺の色が強くなってきていた。

 
「あ…、でもアレかぁ…」
 更に突っ込む。

 本当にお母さまが大した変化がなければ、絶対安静でしばらく入院するだけだから少し楽になり、暇になるはずなのである…

『あ、アレって?』

「アレですよぉ…
 でもぉ久しぶりの帰省になるのだから、昔の懐かしいお友達とかと遊べますもんねぇ…
 確か…3年振りの帰省でしたよね?」

 少しだけ…
 嫌味を込めてそう言った。。

 だって…

 わたしは寂しいのだ…

 本当に寂しくて、不惑で、不安なのだ…

 そしてワザと『懐かしいお友達』って言ったのだ。

 わたしは懐かしくない、消し去りたい昔の存在に振り回されているのに…
 と、本当は自業自得なのだが、その時は、そう思ってしまったのである。

 自分が悪いのだが…

 そう言わずにはいられなかったのだ…

 すると、そんなわたしの想いからのささやかな嫌味が伝わったかの様で、彼は少し沈黙し
『………』
 一瞬、考えてるみたい…
 で、あり、そして、彼の動揺が伝わってきた。

『あ、うん、3年振りの帰省…だ』
 すると、やや苦しげな感じで、呟く様に言ってきたのだ。

「その前は?」
 すかさず訊き返した。

 わたしはその前の彼の帰省についてはもちろん知らない…

『うーん、あれはオヤジの葬式の前後だから…
 もう7、8年前になるかなぁ…』
 そう、思い出しながら話してくる。





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